奥村多喜衛

奥村 多喜衛 - ハワイで活躍した日本人牧師

奥村多喜衛（おくむら たきえ）は、1865年に土佐藩で生まれ、1951年にこの世を去った日本人牧師です。彼は、アメリカのハワイ準州での長い活動を通じて、日本人移民のための教育と布教に力を注ぎました。彼の生涯は、単なる宗教的活動にとどまらず、文化的な架け橋の役割を果たしました。

生い立ちと初期の経歴

奥村は、高知県の安芸郡田野村で生まれ、土佐藩の郡奉行の長男として育ちました。若い頃には高知中学校に通っていましたが、学業を中退。その後、1885年には大阪府警に書記として就職しました。しかし、遠戚である片岡健吉の影響を受け、自由民権運動に参加。特に後藤象二郎の指導のもとで建白書作成に関わりながら活動しましたが、保安条例により東京から追放されてしまいます。

その後、大阪に戻り、宮川経輝の指導で受洗。1890年には同志社神学校に入学し、1894年に卒業しました。

ハワイへの渡航と布教活動

卒業後、奥村はハワイ伝道会社の宣教師としてハワイに渡り、そこでの生活をスタートさせます。彼の布教活動の中で特筆すべきは、1904年のマキキ教会の設立です。この教会の建築は、彼の故郷である高知城の天守を模しており、奥村の故郷への深い思いが込められています。

教育への尽力

彼は宗教活動に加えて、日本人移民の子どもたちの教育にも積極的に取り組みました。1896年にはホノルル市に日本人小学校を開設し、1910年には中等教育と高等女学校も設立。「布哇中央学院」と改称されたこの教育機関は、後に多くの日本人移民の子弟に教育の機会を提供します。

奥村は、排日運動や日系人社会の内部での対立という難題にも直面しましたが、彼は日系人コミュニティにおける融合と理解を推進するため、排日予防啓発運動を展開しました。1927年には日系市民会議を創設し、以後15回にわたって会議を開催し、若い日系人リーダーの育成を促しました。

戦後の活動と最期

太平洋戦争の終結後、奥村はラジオを通じて日米間の友好関係を呼びかけました。また、1947年以降は日本への帰国を希望しましたが、叶うことはありませんでした。そして1951年の2月10日、彼はその生涯を閉じました。

著書

奥村多喜衛は、宗教的かつ教育的な視点から執筆活動も行い、いくつかの著書を残しました。代表的な著書には『成功の生涯』（1903年）、『太平洋の楽園』（1917年）、および『布哇に於ける日米問題解決運動』（1925年）があります。

まとめ

彼の活動は、単なる宗教的な布教にとどまらず、移民社会の教育や文化交流に寄与したものでした。奥村多喜衛の取り組みは、当時の日本人移民にとって、希望の象徴でありました。彼が残した教会や学校は、今なおその精神を受け継いでいます。

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