奥沢検車区

奥沢検車区は、かつて東京急行電鉄（現在の東急電鉄）が東京都世田谷区に設けていた重要な車両基地です。目黒蒲田電鉄時代の1923年にその歴史を始め、長い年月にわたり車両の維持管理を担いました。しかし、組織再編を経て1988年にその役割を終え、雪が谷検車区に統合されました。現在も「元住吉検車区奥沢車庫」として施設は活用され、主に目黒線用車両の留置場所となっています。

沿革

奥沢検車区のルーツは、1923年3月11日に遡ります。この日、目黒蒲田電鉄の目蒲線が開業したのに合わせ、奥沢駅の北側に「奥沢電車庫」として開設されました。これは、開業したばかりの路線の車両を収容し、日常的な点検を行うための施設でした。

開設から間もない1928年1月21日には、車両の専門的な修繕業務機能が、東横線の元住吉工場へ移管されることになりました。これにより、奥沢電車庫は主に車両の留置や軽度の検査を行う拠点となります。しかし、太平洋戦争が始まり、特に本土空襲が激化すると状況は一変します。目蒲線や大井町線の車両を、空襲の危険を冒して遠方の元住吉工場まで回送して検査・修繕を行うことが困難となったためです。この緊急事態に対応するため、やむを得ず奥沢に再び修繕設備を設け、「奥沢工場」として定期検査や修繕作業を実施せざるを得ない状況となりました。

終戦後の1946年8月1日、東京急行電鉄の組織再編により支社制度が導入されます。この時、目蒲線および大井町線の車両に対する定期検査や修繕業務は、新たに設けられた奥沢工場に正式に移管されることになりました。これは戦時下に復活した機能を恒常的なものとした動きと言えます。さらに、1948年6月には目黒検車区が新設され、奥沢工場と連携する形で車両管理体制が構築されました。しかし、この体制も短期間で変更され、1952年9月には奥沢工場での修繕業務は再び元住吉工場へ集約されました。

検車区としての組織体制も変遷をたどります。1951年10月16日には、目黒検車区から池上線の車両を管轄する雪が谷検車区が分離しました。そして1958年10月、目黒検車区は名称を「奥沢検車区」と改称します。この際、管轄する路線も見直され、大井町線の車両管理は新たに分離された自由が丘検車区へ移管されました。これにより、奥沢検車区は主に目蒲線（現在の目黒線と東急多摩川線の一部）の車両基地としての役割を担うことになります。

奥沢検車区としての独立した名称と機能は、1988年9月16日まで続きました。この日、目蒲線を管轄していた奥沢検車区は、隣接する雪が谷検車区に統合される形で廃止されました。奥沢の施設は、雪が谷検車区の「奥沢班」となり、引き続き一部の検査業務などが行われていました。しかし、目蒲線が目黒線と東急多摩川線に系統分離された2000年8月6日、この雪が谷検車区奥沢班も廃止されました。

過去の所属車両

奥沢検車区がその役割を果たしていた時期には、東急線の様々な車両が所属し、日常のメンテナンスを受けていました。主に目蒲線や大井町線で使用された車両を中心に、旧3000系、旧5000系、旧7000系といった歴史的な車両から、その後の世代である7200系、7600系、7700系などが挙げられます。これらの車両が、奥沢検車区を拠点に日々の安全運行を支えていました。

現在の役割

現在、かつて奥沢検車区が存在した場所の施設は、東急電鉄の「元住吉検車区奥沢車庫」として活用されています。検車区としての機能は元住吉検車区が担っており、奥沢の施設は主に目黒線用車両の留置場所として重要な役割を果たしています。多くの目黒線車両が日中や夜間、この車庫で休息しており、歴史的な車両基地としての名称は変わりましたが、今も東急の運行を支える拠点の一つであり続けています。

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