女手形

女手形（おんなてがた）

概要

女手形とは、江戸時代に女性が関所を通行する際に必要とされた特別な通行手形のことです。女切手（おんなきって）や女証文（おんなしょうもん）とも呼ばれます。

江戸幕府は「入鉄炮出女（いりてっぽうでおんな）」政策を採用しており、大名の妻子が人質として江戸の藩邸に住んでいたため、彼女たちが国元へ逃亡するのを防ぐ必要がありました。そのため、江戸から出る女性は幕府の留守居から女手形の発行を受ける必要がありました。

この規制は江戸に住む女性だけでなく、他の地域に住む女性にも適用されました。西国や上方では京都所司代が、その他の地域では指定された藩や役人が手形を発行していました。手形には、女性本人の名前、住所、身分、出発地、目的地、同行者、乗り物などが記載されていました。

女手形の有効期限は、発効日の翌月末までとされていました。また、留守居や京都所司代が発行した女手形は、半年ごとに返却する必要がありました。

文久2年（1862年）には、参勤交代の大幅な緩和（事実上の廃止）によって人質制度の意義が薄れ、関所を通過する女性の人数を事前に届け出るだけで済むようになり、女手形は形骸化しました。

女手形の役割

女手形は、江戸時代において女性の行動を厳しく制限する重要な役割を果たしていました。女性が自由に移動することを制限することで、幕府は社会秩序の維持を図ろうとしました。

女手形の発行には、女性の身分や行動を詳細に記録するという目的もありました。これにより、幕府は女性の動向を把握し、統制することが可能になりました。

女手形の変遷

女手形は、当初は厳格に運用されていましたが、時代とともにその役割は変化していきました。参勤交代の緩和や、社会情勢の変化に伴い、女手形は徐々に形骸化していきました。

しかし、女手形は、江戸時代の女性の生活や社会状況を理解する上で、重要な資料となっています。この手形を通じて、当時の女性がどのような制約の中で生活していたのかを知ることができます。

まとめ

女手形は、江戸幕府の政策によって生まれた特別な通行手形であり、女性の移動を厳しく管理するものでした。この手形は、当時の社会制度や女性の地位を理解するための重要な手がかりとなっています。

参考文献

渡辺和敏「女手形」『日本史大事典 1』（平凡社 1992年）ISBN 978-4-582-13101-7
渡辺和敏「女手形」『日本歴史大事典 1』（小学館 2000年） ISBN 978-4-095-23001-6

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