女王蜂

女王蜂とは

女王蜂は、社会性を持つハチの群れにおいて、繁殖を専門とする雌の個体です。群れの中心として巣に君臨しているように見えますが、実際には群れを統率するのではなく、生殖を主な役割とする「生殖虫」です。

女王蜂の誕生

ミツバチの場合、女王蜂の幼虫は4月から6月頃に、巣の下端に作られる王台と呼ばれる特殊な巣房で育ちます。この時、大量のローヤルゼリーを与えられます。ローヤルゼリーに含まれるロイヤラクチンが、幼虫を女王蜂へと分化させます。女王蜂は、産卵能力を持たない働き蜂とは異なり、体が大きく、産卵機能が発達しています。そのため、女王蜂は自ら蜜を集めることはせず、産卵に専念します。ミツバチの女王蜂は、1分間に約2個、1日に約2000個もの卵を産むことができます。

女王蜂の役割

女王蜂は、9オキソデセン酸を主成分とする女王物質を分泌します。この物質は、働き蜂の卵巣の発達を抑制し、群れの結束力を高める役割を果たします。女王物質の生産能力が低下すると、新しい女王蜂が誕生し、古い女王蜂は別の場所へ移動して新たな巣を作ります（分封）。複数の女王蜂が同時に育った場合、最初に羽化した女王蜂が他の女王蜂を殺します。

創作物では、女王蜂と雄蜂が巣に君臨しているように描かれることもありますが、雄蜂は繁殖期以外にはほとんど現れず、繁殖期が終わると働き蜂によって巣から追い出されます。

スズメバチの女王蜂も雌であるため毒針を持っていますが、攻撃性は低く、繁殖が最優先です。働き蜂が羽化するまでは、幼虫の世話も行います。スズメバチの女王蜂は、働き蜂よりも3回りほど大きく、オオスズメバチの場合、その差は約15mmにもなります。

女王蜂の鳴き声（クィーンパイピング）

女王蜂は、「パイピング」と呼ばれる独特な音を発します。これは、以下の3種類に区別されます。

クワッキング（quacking）: 女王蜂が、巣室から出られない場合に発する音。
トゥーティング（tooting）: 殺すべきライバルの女王蜂を探していることを知らせる音。
シュリーキング（shrieking）: 働き蜂などから攻撃を受けていることを知らせる音。

関連用語

働き蜂: 繁殖能力を持たない雌のハチで、巣作りや育児、食料採集などの役割を担う。
女王アリ: アリの社会で繁殖を担う雌の個体。
結婚飛行: 女王蜂が雄蜂と交尾を行うための飛行。
社会性昆虫: 集団で生活し、役割分担を行う昆虫。
真社会性: 社会性昆虫の中でも、世代が重複し、協力して育児を行う社会構造。
ガマゲイト: 産卵可能な働き蜂で、女王のように繁殖が可能になった個体。
ワーカー・ポリシング: 働きアリやハチが、女王以外の個体が産んだ卵を除去する行動。
* 分封（巣分かれ、分蜂）: 古い女王蜂が働き蜂を連れて、新しい生息場所を探す行動。養蜂家は、分封を防ぐために女王蜂の羽を切ることがあります。

女王蜂は、ハチの社会において重要な役割を果たしています。その生態を理解することは、ハチの社会全体を理解する上で不可欠です。

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