女王陛下のピチカート・ファイヴ

『女王陛下のピチカート・ファイヴ –ON HER MAJESTY'S REQUEST–』は、1989年7月21日にリリースされたピチカート・ファイヴの3枚目のアルバムです。

アルバムのコンセプトと制作背景

このアルバムは「架空のスパイ映画のサウンドトラック」というコンセプトのもと、各メンバーが楽曲を持ち寄って制作されました。小西康陽は、前作『Bellissima!』のレコーディング終了時に感じた「真面目すぎた」という反省から、ピチカート・ファイヴの原点であるパーティーバンドとしての側面を取り戻そうとしたと語っています。この反省から、編集技術が積極的に導入され、フェードアウトしないエンディングやNGテイクの採用、会話の録音など、実験的な試みが数多く取り入れられました。この編集手法は、小西が当時関わっていた雑誌『MEN'S BIGI MAGAZINE VISAGE』からインスピレーションを得たものです。雑誌のような自由な構成を音楽に取り入れようという試みは、従来の音楽制作の枠にとらわれない斬新な発想でした。

CDリリースへの意識

本作は、CDのみでのリリースを前提に制作された最初のアルバムです。当時、レコードからCDへの移行期であり、アルバムの構成に対する考え方が大きく変わる中で、制作陣は新たな表現を模索しました。レコードのA面・B面という構成から解放され、より自由な発想で楽曲を並べることが可能になりました。

楽曲と参加メンバー

「衛星中継」は、当時ポータブル・ロックのメンバーだった野宮真貴が初めてレコーディングに参加した楽曲です。野宮は、この曲のレコーディングに参加した際、以前から親交のあったポータブル・ロックのメンバーである鈴木智文、中原信雄の紹介で、小西からデュエットを依頼されたと語っています。野宮は自身の音楽性に近いものを感じ、自然に歌えたと述べています。また、「夜をぶっとばせ」は、田島貴男がホーンアレンジを担当しています。小西からの要望に対し、田島は過去のソウルミュージックを参考にしながらアレンジを完成させました。この曲は後に『月面軟着陸』で再録され、オリジナル・ラヴのレパートリーにもなっています。

パッケージデザイン

パッケージデザインは、信藤三雄が担当しました。透明トレーを使い、ピクチャーレーベルが見えるようにしたのは世界初だと述べています。信藤は、化粧品のパッケージのように、商品として魅力的なデザインを意識し、文字を大きくしたり、バーコードをデザインに取り込んだりしました。モデルへのボディペインティングも信藤自身が手がけましたが、裸に直接描くという作業は照れくさく大変だったと語っています。

プロモーション盤と再発

アルバム発売時には4曲入りプロモアナログ盤も制作されました。また、1995年には、ソニー時代のカタログ全4タイトルがリマスターされ再発されました。この際、サブタイトルが変更され、2曲がカットされたほか、収録時間も変更されています。初回盤は三方背BOX仕様で、〈トップ・シークレット〉はエンディングが10秒長くなっています。2004年には、ピチカート・ファイヴ解散3周年を記念して品番を改め再発売されています。

収録曲

オードリィ・ヘプバーンの休日
イントロダクション “ジェイムズ・ボンドとヴェトナム”
新ベリッシマ
恋のテレビジョン・エイジ
リップ・サーヴィス
スパイ対スパイ
スウェーデン娘
自白剤
陽動作戦
トップ・シークレット(最高機密)
バナナの皮
トップ40
ホームシック・ブルース
衛星中継
遠い天国
女王陛下よ永遠なれ
夜をぶっとばせ
ゴーゴー女王陛下

このアルバムは、ピチカート・ファイヴの音楽性における重要な転換期を示す作品であり、その後の音楽シーンにも大きな影響を与えました。実験的な要素と洗練されたポップセンスが融合した、彼らの代表作の一つと言えるでしょう。

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