女系家族

小説『女系家族』の概要

『女系家族』は、著者・山崎豊子が1963年に発表した小説です。連載は『週刊文春』で行われ、後に文藝春秋から単行本として刊行されました。物語は、大阪船場の老舗木綿問屋「矢島商店」を舞台に、家族の間で繰り広げられる遺産相続争いを描いています。特に、主人公たちである三姉妹の間に横たわる複雑な感情や利害関係が物語の核心となります。

あらすじ

1940年代の日本。矢島商店は代々女系が続く家族で、社長・矢島嘉蔵が急死したことで物語が始まります。遺言状が残されたことで明らかになるのは、嘉蔵の愛人である浜田文乃と、三人の娘たちである藤代、千寿、雛子、さらには叔母の芳子や商店の番頭である宇市など、複数の人物が絡み合う権力争いです。

遺言によれば、愛人文乃が嘉蔵の子を宿しており、その存在が新たな展開を連れてきます。長女藤代は表向きには冷静を保ちながらも、実は権力欲を胸に秘め、次女千寿は婿養子を迎えたことで家族内で一歩有利な立場に身を置き、三女雛子は妹たちの争いから距離を置きつつも、いつの間にか争いに巻き込まれていきます。

三姉妹の間では、互いに遺産相続をめぐっての争いが激化していきます。藤代は踊りの師匠・梅村芳三郎と密接な関係を持ち、彼とともに策略を巡らせ、千寿は夫とともに会社を実質的に支配しようと画策します。雛子は叔母芳子に支えられ、策略を講じることになるのです。

物語は、親族会議を通じて遺産相続の決着をつける方向に進むものの、そこに現れる文乃が新たな展開を予感させます。彼女は、出生証明や遺産分配に関する不正を暴く遺言状を持ち出し、状況が一変します。

登場キャラクター

• - 浜田文乃: 嘉蔵の愛人で、三姉妹の間に新たな波乱をもたらす。彼女の出現により、遺産相続争いはますます複雑になる。
• - 矢島藤代: 長女であり、父の会社を継ぐことに執着する典型的な権力志向のキャラクター。表面上は冷静だが、内には強い野心を秘めている。
• - 矢島千寿: 次女で、家業や姉に対して劣等感を抱く。相続を巡る争いの中で少しずつ意見を強めていく。
• - 矢島雛子: 三女であり、自由な発想を持つが、議論や争いに巻き込まれてしまう。
• - 矢島嘉蔵: 矢島商店の社長。彼の遺言は物語のキーとなり、多くの人々の運命を変える要因となる。

メディア化

『女系家族』は1963年に映画化され、その後もテレビドラマ化が繰り返されています。1963年から放送された初のテレビドラマは、全26回にわたって放送され、その後も1984年、1991年、2005年、2021年と続けて映像作品として取り上げられました。各時代に応じたキャストで新たな視点を加えながら、物語は再解釈され続けています。

このように、女系家族はただの遺産相続に留まらず、人間関係の複雑さや欲望の渦巻く姿を描いた作品として、世代を超えた人気を誇ります。

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