姜昂

姜昂（きょう こう）は、明代に活躍した官僚であり、その生涯は正確にはわかっていないものの、字を恒頫（こうふ）と称し、蘇州府太倉州（現在の江蘇省太倉市周辺）を本貫としていたことが記録に残っています。

彼は姜敏（きょう びん）の子として生まれ、1472年（成化8年）に進士の試験に合格し、官僚としての道を歩み始めました。最初に任じられたのは棗強県（現在の河北省衡水市棗強県）の知県であり、地方行政官としてその手腕を発揮しました。その後、監察御史へと転じ、中央の官僚として不正を監視する役割を担うことになります。

1486年（成化22年）には、同僚の官僚たちとともに、当時勢力を誇っていた方士、李孜省（り ししょう）の罪を弾劾しました。この行動は皇帝の怒りを買い、姜昂は午門（紫禁城の正門）の外で杖罰を受けるという厳しい処分を受けました。しかし、彼はこの処罰にも屈せず、老齢の母を気遣い、南方への転任を願い出ました。その願いが受け入れられ、河南知府（現在の河南省の知事）として地方に赴任することになりました。その後、寧波知府（現在の浙江省寧波市の知事）へと転じ、さらに福建左参政（福建省の副長官）にまで昇進しました。地方行政官として数々の功績を残したと考えられます。

しかし、高齢となった母の介護が必要になったため、姜昂は官職を辞して故郷に帰ることを決意します。故郷に戻った後、母親の喪に服している間に亡くなったと伝えられています。彼の死は、故郷への帰還と、家族への深い愛情を物語るものとして、後世に語り継がれています。

姜昂には姜龍（きょう りゅう）という息子がいました。姜龍がどのような人生を送ったかは詳らかではありませんが、父である姜昂の功績は、明史にも記録され、後世にその名前が伝えられることになりました。

姜昂の墓碑銘は王鏊（おう がく）の著書『震澤集』に収録されており、このことからも、彼の生涯と功績が当時の人々から高く評価されていたことが窺えます。

彼の生涯は、官僚としての責任感と、家族への愛情という二つの側面から見ることができます。不正を許さない強い意志を持ち、困難な状況でも正義を貫いた一方で、年老いた母を思いやる優しい心を持ち合わせていました。姜昂は、明代の官僚の中でも、特に人間味あふれる人物として記憶されるべき存在だと言えるでしょう。

参考文献としては、『明史』巻165 列伝第53に彼の記述があり、また、王鏊の『震澤集』巻28には「福建布政使左参政姜公墓誌銘」が収録されています。

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