子飼橋停留場

子飼橋停留場（こかいばしていりゅうじょう）は、かつて熊本県熊本市内に設置されていた、熊本市交通局の幹線に属する電停でした。地域住民の日常的な移動手段として利用されていましたが、現在ではその姿を見ることはできません。

この停留場の歴史は、昭和3年（1928年）12月26日に始まりました。当時の黒髪線、浄行寺町と子飼橋間の開業に合わせて開設されたものです。単式ホーム1面1線という簡素な構造ながら、地域の人々にとって重要な交通結節点としての役割を担いました。

しかし、時代の流れとともに路面電車の運行体系が見直される中、子飼橋停留場もその歴史に終止符を打つことになります。昭和47年（1972年）3月1日、熊本市交通局の幹線の一部である水道町電停から浄行寺町を経由し、黒髪線の子飼橋停留場に至る区間が廃止されたことに伴い、子飼橋停留場も廃駅となりました。開業から廃止まで、約44年間にわたり地域の足として機能してきたことになります。

子飼橋停留場があった周辺地域は、現在も子飼として知られています。かつては熊本と大分を結ぶ主要幹線道路であった国道57号の一部が停留場の近くを通っていましたが、現在ではバイパス道路の整備が進み、停留場跡地の周辺道路は熊本県道337号熊本菊陽線の一部となっています。

子飼地域には、熊本大学や活気のある子飼商店街があり、停留場が現役だった頃から多くの人々の往来がありました。特に子飼交差点は、歴史的に興味深い場所です。昭和44年（1969年）3月5日には、この交差点で日本で初めてのスクランブル交差点が運用を開始しました。これは、子飼交差点周辺の交通の流れを整理し、特に子飼商店街や電停を利用する人々の利便性と安全性を向上させることを目的として導入されたものです。路面電車の停留場が、当時の先進的な交通システム導入の一因となっていたことは、地域におけるその重要性を示すエピソードと言えるでしょう。

子飼橋停留場は廃止され、その物理的な構造は失われましたが、子飼地区の歴史の一部として人々の記憶や記録の中に存在し続けています。停留場があった場所は、今はかつての賑わいを直接物語るものは少なくなりましたが、周辺の子飼橋や子飼商店街、そして日本初のスクランブル交差点が設置された交差点などは、この地域が歩んできた歴史を今に伝えています。かつて路面電車が走り、多くの乗降客で賑わったであろう停留場跡地は、静かに地域の変化を見守っています。

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