存在のない子供たち

映画『存在のない子供たち』の概要

『存在のない子供たち』は、2018年に公開されたレバノンのドラマ映画で、監督はナディーン・ラバキーが務めました。映画の脚本にはラバキー自身をはじめ、複数の共同執筆者が参加し、上記の監督が持つビジョンが具現化されています。この作品は、12歳の少年ゼインを主人公に据え、彼の目を通して子供たちが直面するさまざまな問題を扱っています。

主演のゼイン・アル・ラフィーアは、実際にシリアからの難民であり、彼が演じるゼインは貧しい環境で育った子供であるという共通点があります。物語は、ゼインがケルビンと呼ばれるスラム街での様々な経験を経て、エチオピア移民のラヒルと出会い、彼女の幼い息子ヨナスとの関わりを通じて成長していく過程を描いています。

映画の背景

本作は2018年5月17日にフランス・カンヌでの映画祭において初上映され、観客から15分間のスタンディングオベーションを受けました。その後、映画は審査員賞も受賞し、業界内外で多くの評価を得ることになります。映画はソニー・ピクチャーズ クラシックスによって北米などで配給され、国際的にはワイルド・バンチが担当しました。

『存在のない子供たち』は、そのリアリズムと強烈なメッセージによって、批評家から高く評価され、『ニューヨーク・タイムズ』では2018年のベスト映画としても選ばれました。また、アカデミー賞の外国語映画賞にもノミネートされています。高い評価を得たこの映画は、世界中で65百万ドル以上の興行収入を記録し、アラブの映画として史上最高の売上を達成しました。

ストーリー展開

物語は、レバノンのスラム街で過酷な生活を強いられている少年ゼインの視点から語られます。彼はシリア内戦から逃れた難民の家庭に生まれ、貧困ゆえに学校に通えず、日々を路上で物を売ることで生き延びています。ゼインにとって、愛する妹サハルが心の支えでしたが、両親は彼女をアサードという店主に嫁がせることを決め、その瞬間からゼインの絶望が始まります。自分の妹を救うために必死なゼインは、家出を決意します。

路上で様々な人と出会う中、エチオピア移民の女性ラヒルとその幼い息子ヨナスとの出会いが彼の運命を大きく変えていきます。しかし、ラヒルが不法就労の疑いで逮捕されてしまうことで、ゼインは一人残された息子ヨナスの世話をしながら生き残りをかけた過酷な生活を強いられます。最終的に彼はサハルが妊娠し、無理な出産によって亡くなったことを知り、復讐心からアサードを刺してしまうのです。

映画のテーマとメッセージ

ゼインが法廷で証言するシーンでは、彼が「僕を生んだ罪で」と言い放ち、親たちに対する怒りを表現します。この言葉を通じて、映画は現代社会における子供たちの厳しい現実や、親の責任、そして子供たちへの思いやりについてのメッセージを送ります。

ゼインの物語は、希望と絶望の狭間で揺れ動くものであり、最終的にはわずかな光を見出すという形で締めくくられます。子供たちが直面する困難を描くことで、観客に対して深い理解と感動を呼び起こすことに成功しています。

結論

『存在のない子供たち』は、子供たちの視点から描かれる苦難の物語であり、特に難民問題や貧困の現実に取り組んでいます。ナディーン・ラバキー監督の手によって、作品は生々しくもリアルな描写と高い感情表現を持ち、多くの観客に感銘を与え続けています。

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