孝行之巻

孝行の巻 - 沖縄の伝説

『孝行の巻』は、沖縄の伝統的な組踊りの一つで、玉城朝薫によって創作されました。この作品は、1756年に尚穆王の冊封祝いの席で上演されたという記録が残っていますが、初演年の確実な情報は不明です。沖縄文学の中でも特に感動的な物語として知られています。

あらすじ

物語の舞台は、池屋良漏池という場所で、ここに住む大蛇が引き起こす強烈な嵐によって、田畑が荒らされ、村々に災厄が降りかかります。この危機的な状況を打破するために、占い師「時の大屋子」は不吉な託宣を下します。それによれば、14〜15歳の子供を大蛇の生け贄として捧げれば、荒れた天地は落ち着きを取り戻すとされていました。

これを受けて、村の役人は高札を掲示し、生け贄を募ります。普通の家庭の暮らしを送る姉弟は、困難な状況に直面します。姉は、彼女たちの将来を守るため、自らが生け贄になることを決意します。そして、彼女は弟に別れを告げて、役人のもとを訪れ、母と弟のために生け贄としての受け入れを懇願します。

姉が祭壇に引かれると、彼女は神に祈りを捧げます。その瞬間、なんと空から観音が降臨し、大蛇を滅ぼして姉を救出します。この奇跡は、村の人々にとっても驚きと感動をもたらしました。姉の運命に悲しみを覚えた母は、怒りに駆られて弟を連れて屋良漏池へと向かいます。

道中、役人たちがその奇跡の話を耳にし、母と弟と出会います。姉が生け贄にならずに生きているという事実を知った母と弟は、涙の再会を果たします。親子三人が一緒にいることの喜びは、安堵と感謝の気持ちで満ち溢れています。

王府の決定

この感動的な出来事を受けて、王府は姉の勇気を称賛し、彼女を王子の妃として迎えることを決定しました。また、弟は王女の婿に取り立てられることになります。家族は喜び、再び集まることができた幸せな気持ちで帰途につきます。

『孝行の巻』は、単なる物語ではなく、家族愛や自己犠牲、奇跡の力が描かれた、深いメッセージを持つ伝承です。沖縄の文化や価値観が色濃く反映されており、観る人々に感動を与えています。今でも多くの人々に親しまれ、演じられ続けている作品です。

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