宇宙戦争 (横山信義)
横山信義の筆による『宇宙戦争19○○』（西暦下2桁が入る）は、全3巻で展開される日本の架空戦記シリーズです。本書は、第二次世界大戦を背景とした架空戦記の一つですが、横山信義氏がこれまで手掛けてきたような歴史の分岐点を描く作品とは一線を画します。その基盤となっているのは、H.G.ウェルズが著した古典SF小説『宇宙戦争』であり、その物語の続編として位置づけられています。したがって、以降のストーリーは実際の歴史の推移とは連動しない、独自の展開を辿ります。
ウェルズ作品との関連性は随所に示唆されています。例えば、ロンドンが再び襲撃される場面では、原作に登場したと思われる人物が再登場したり、イギリス海軍の軍人が原作におけるサンダーチャイルド号の名に言及したりする箇所があります。また、開戦直前の日本軍が行った厳重な無線封鎖が設定に組み込まれており、これが火星人による侵攻の際、日本本土や日本軍が直接的な襲撃を受けなかった理由付けとして機能しています。
物語は、1941年12月8日、真珠湾攻撃のその朝から始まります。真珠湾へ向かった日本の第一次攻撃隊がそこで目にしたのは、すでに炎上し壊滅状態に陥った湾とアメリカ太平洋艦隊の残骸、そしてその中で異様な三本脚で動き回る正体不明の巨大兵器でした。この三本脚の物体からの攻撃を受けた攻撃隊は反撃を試みますが、機銃や爆撃は全く効果がなく、その放つ光線兵器の前に壊滅的な被害を受けます。同日、フィリピン、マレー、さらにはベルリンやモスクワといった世界各地にも同様の異形兵器が出現し、翌日にはサンフランシスコとロンドンにも現れ、軍民を無差別攻撃します。ロンドンでは、この光景を目にした人々の中から「奴らが帰ってきた」という呟きが漏れます。各国がこの未曽有の事態に戸惑う中、イギリスからもたらされた驚くべき情報によって、敵の正体が太陽系第四惑星から来た火星人であること、そして彼らが1900年のロンドン侵攻時よりも強力化された三脚兵器「トライポッド」と、新たな飛行兵器「フライング・スティングレイ」を駆使して、全地球規模での侵略を開始したことが明らかになります。
1942年に入ると、火星人はユーラシア大陸やアメリカ大陸の広範囲へと勢力を拡大していきます。地球側も対抗するため「地球統合軍」設立に向けた動きを見せますが、国家間の根深い相互不信から、協力体制の構築は困難を極めていました。そのような状況下、対火星人情報局(IAM)はボルネオ島に火星人の重要施設が存在する可能性が高いと報告します。これを受けて、10月には日米連合軍がボルネオ防衛の要衝であるフィリピン・ルソン島への反攻作戦を開始します。しかし、トライポッドの待ち伏せや米軍の日本軍への不信感、そして新たに投入された飛行トライポッドの攻撃により、日本艦艇「陸奥」「加古」「古鷹」などが沈没する大きな損害を出し、作戦は失敗に終わります。この失敗は各国間の相互不信を頂点にまで高め、地球統合軍設立は瓦解の危機に瀕します。この状況を打開するため、日本の東条英機首相らが渡米し首脳会談を実施、真珠湾攻撃に関する詳細な情報を開示することで日米間の不信感解消に成功します。そして1943年4月、新たな兵器を装備した日米連合軍による第二次ルソン反攻作戦が開始されます。「三式弾乙型」による電波妨害、陸上機P-39によるFS迎撃、そしてVT信管付き砲弾の活用により、アメリカ艦艇にも「ノースカロライナ」「ブルックリン」「ナッシュビル」「サンタフェ」といった犠牲者を出しますが、最終的に戦闘に勝利しルソン島の奪回に成功します。この成功を受け、同年6月1日、全世界の軍事力を結集した地球統合軍が正式に発足し、対火星人戦争に向けた総力戦体制が確立されます。しかし、その頃パロマ天文台から、3年以内に地球に到達する人工天体群の存在が報告され、新たな脅威が迫っていることが判明します。
1945年、地球への軌道を描いて接近する人工天体群は、単なる天体ではなく、火星人の本隊を乗せた巨大な宇宙船団であると推測されます。この宇宙船団が地球に到達すれば、地球人類の敗北は避けられないと判断した地球統合軍でしたが、それまでに火星人に占領された全地域を奪回することは極めて困難でした。そのような状況下、火星人の重要拠点が存在すると見られるボルネオ島の偵察により、島から放たれる巨大な光芒、海岸線から基地へ伸びる道路、そしてマハカム川の異常が報告されます。統合軍は、この光芒は宇宙船を地球の周回軌道に乗せるための制動装置であり、道路と川の異常はその発射装置の冷却水パイプが埋設された痕跡であると結論付けます。人類に残された時間は少ないと判断した統合軍は、世界各国に呼びかけ、全空海軍力を結集してボルネオ島の光芒照射装置の破壊を目指す「オリンピック作戦」の実行を決定します。1945年11月1日、ボルネオ島沖合に世界各国の艦艇や航空機が集結。人類の存亡を賭けた最終決戦の幕が、今まさに開けようとしていました。
主要な組織・兵器・用語
第十一課: 火星人の地球侵攻に対処するため、日本軍令部第三部に新設された情報収集・分析部署。参謀本部第二部には同様の第十四課が設置されました。
艦隊の大脱出: 1942年4月末から行われたヨーロッパ主要国の海軍艦艇によるアメリカへの避難。海軍力と技術、研究資料の温存が目的で、脱出した技術者は統合軍で新兵器開発に、艦艇はオリンピック作戦などに貢献しました。
対火星人情報局 (IAM): アメリカの統合幕僚会議の提唱で発足した、火星人に関する情報を収集・分析する国際機関。世界各国の情報将校が集結しました。
三式弾乙型: 日本海軍の対空砲弾三式弾を改良した、大量の金属箔を散布する対電波誘導砲弾。1943年の第二次ルソン奪回作戦でフライング・スティングレイの無力化に効果を発揮しました。既存の三式弾は三式弾甲と改称されています。
地球統合軍: 1943年6月1日に正式に発足した、全世界の軍隊を一元的に指揮する最高機関。総司令部はワシントンD.C.に置かれ、ジョン・トーヴィー大将が総司令官、ドワイト・D・アイゼンハワー大将が副司令官を務めました。
オリンピック作戦: 1945年11月1日に開始された、火星人の本隊宇宙船を地球軌道に乗せないための大規模作戦。ボルネオ島の火星人制動装置または冷却装置の破壊を目標とし、戦艦32隻、空母54隻、巡洋艦106隻、駆逐艦480隻、艦上機3200機、基地機5800機という、人類史上最大規模の海空兵力が投入されました。
航空機: オリンピック作戦には、対FS用に大口径機銃を搭載した烈風、F4U、F7Fといった艦上戦闘機や、P-47（日本名：五式戦闘機「犬鷲」）、P-65「パファダー」といった陸上戦闘機が参加しました。また、重爆撃機B-29は、防御火器を強化し、対制動機用の特殊爆弾搭載改修機も投入され、作戦の「決戦機」として運用されました。これらの機体には、日米独ソなど様々な国のパイロットが搭乗しました。
トライポッド: 火星人の主力陸上兵器。原典のタイプに加え、大型タイプも登場。主兵装は熱線で、飛行ユニット装着により海上移動も可能です。操作タイプや電波妨害タイプなど派生型も存在。ドイツ軍ではドライペイン、日本軍ではタカアシガニとも呼ばれます。
フライング・スティングレイ (FS): 火星人の無人航空機。30mm以下の機銃を通さない防御力と、空中静止、直角機動など驚異的な運動性能を持ちます。電波誘導で操作され、IAMはこの点に着目し無力化を考案しました。
アンノウン・クリーチャー (UC): 本作に登場するもう一種の火星人。従来のタコ型支配種族とは異なると見られ、世代宇宙船で太陽系外から来た可能性が示唆されますが、詳細は不明です。
刊行情報
宇宙戦争1941: 2011年11月18日発売
宇宙戦争1943: 2012年6月8日発売
* 宇宙戦争1945: 2013年4月20日発売
ウェルズ作品との関連性は随所に示唆されています。例えば、ロンドンが再び襲撃される場面では、原作に登場したと思われる人物が再登場したり、イギリス海軍の軍人が原作におけるサンダーチャイルド号の名に言及したりする箇所があります。また、開戦直前の日本軍が行った厳重な無線封鎖が設定に組み込まれており、これが火星人による侵攻の際、日本本土や日本軍が直接的な襲撃を受けなかった理由付けとして機能しています。
物語は、1941年12月8日、真珠湾攻撃のその朝から始まります。真珠湾へ向かった日本の第一次攻撃隊がそこで目にしたのは、すでに炎上し壊滅状態に陥った湾とアメリカ太平洋艦隊の残骸、そしてその中で異様な三本脚で動き回る正体不明の巨大兵器でした。この三本脚の物体からの攻撃を受けた攻撃隊は反撃を試みますが、機銃や爆撃は全く効果がなく、その放つ光線兵器の前に壊滅的な被害を受けます。同日、フィリピン、マレー、さらにはベルリンやモスクワといった世界各地にも同様の異形兵器が出現し、翌日にはサンフランシスコとロンドンにも現れ、軍民を無差別攻撃します。ロンドンでは、この光景を目にした人々の中から「奴らが帰ってきた」という呟きが漏れます。各国がこの未曽有の事態に戸惑う中、イギリスからもたらされた驚くべき情報によって、敵の正体が太陽系第四惑星から来た火星人であること、そして彼らが1900年のロンドン侵攻時よりも強力化された三脚兵器「トライポッド」と、新たな飛行兵器「フライング・スティングレイ」を駆使して、全地球規模での侵略を開始したことが明らかになります。
1942年に入ると、火星人はユーラシア大陸やアメリカ大陸の広範囲へと勢力を拡大していきます。地球側も対抗するため「地球統合軍」設立に向けた動きを見せますが、国家間の根深い相互不信から、協力体制の構築は困難を極めていました。そのような状況下、対火星人情報局(IAM)はボルネオ島に火星人の重要施設が存在する可能性が高いと報告します。これを受けて、10月には日米連合軍がボルネオ防衛の要衝であるフィリピン・ルソン島への反攻作戦を開始します。しかし、トライポッドの待ち伏せや米軍の日本軍への不信感、そして新たに投入された飛行トライポッドの攻撃により、日本艦艇「陸奥」「加古」「古鷹」などが沈没する大きな損害を出し、作戦は失敗に終わります。この失敗は各国間の相互不信を頂点にまで高め、地球統合軍設立は瓦解の危機に瀕します。この状況を打開するため、日本の東条英機首相らが渡米し首脳会談を実施、真珠湾攻撃に関する詳細な情報を開示することで日米間の不信感解消に成功します。そして1943年4月、新たな兵器を装備した日米連合軍による第二次ルソン反攻作戦が開始されます。「三式弾乙型」による電波妨害、陸上機P-39によるFS迎撃、そしてVT信管付き砲弾の活用により、アメリカ艦艇にも「ノースカロライナ」「ブルックリン」「ナッシュビル」「サンタフェ」といった犠牲者を出しますが、最終的に戦闘に勝利しルソン島の奪回に成功します。この成功を受け、同年6月1日、全世界の軍事力を結集した地球統合軍が正式に発足し、対火星人戦争に向けた総力戦体制が確立されます。しかし、その頃パロマ天文台から、3年以内に地球に到達する人工天体群の存在が報告され、新たな脅威が迫っていることが判明します。
1945年、地球への軌道を描いて接近する人工天体群は、単なる天体ではなく、火星人の本隊を乗せた巨大な宇宙船団であると推測されます。この宇宙船団が地球に到達すれば、地球人類の敗北は避けられないと判断した地球統合軍でしたが、それまでに火星人に占領された全地域を奪回することは極めて困難でした。そのような状況下、火星人の重要拠点が存在すると見られるボルネオ島の偵察により、島から放たれる巨大な光芒、海岸線から基地へ伸びる道路、そしてマハカム川の異常が報告されます。統合軍は、この光芒は宇宙船を地球の周回軌道に乗せるための制動装置であり、道路と川の異常はその発射装置の冷却水パイプが埋設された痕跡であると結論付けます。人類に残された時間は少ないと判断した統合軍は、世界各国に呼びかけ、全空海軍力を結集してボルネオ島の光芒照射装置の破壊を目指す「オリンピック作戦」の実行を決定します。1945年11月1日、ボルネオ島沖合に世界各国の艦艇や航空機が集結。人類の存亡を賭けた最終決戦の幕が、今まさに開けようとしていました。
主要な組織・兵器・用語
第十一課: 火星人の地球侵攻に対処するため、日本軍令部第三部に新設された情報収集・分析部署。参謀本部第二部には同様の第十四課が設置されました。
艦隊の大脱出: 1942年4月末から行われたヨーロッパ主要国の海軍艦艇によるアメリカへの避難。海軍力と技術、研究資料の温存が目的で、脱出した技術者は統合軍で新兵器開発に、艦艇はオリンピック作戦などに貢献しました。
対火星人情報局 (IAM): アメリカの統合幕僚会議の提唱で発足した、火星人に関する情報を収集・分析する国際機関。世界各国の情報将校が集結しました。
三式弾乙型: 日本海軍の対空砲弾三式弾を改良した、大量の金属箔を散布する対電波誘導砲弾。1943年の第二次ルソン奪回作戦でフライング・スティングレイの無力化に効果を発揮しました。既存の三式弾は三式弾甲と改称されています。
地球統合軍: 1943年6月1日に正式に発足した、全世界の軍隊を一元的に指揮する最高機関。総司令部はワシントンD.C.に置かれ、ジョン・トーヴィー大将が総司令官、ドワイト・D・アイゼンハワー大将が副司令官を務めました。
オリンピック作戦: 1945年11月1日に開始された、火星人の本隊宇宙船を地球軌道に乗せないための大規模作戦。ボルネオ島の火星人制動装置または冷却装置の破壊を目標とし、戦艦32隻、空母54隻、巡洋艦106隻、駆逐艦480隻、艦上機3200機、基地機5800機という、人類史上最大規模の海空兵力が投入されました。
航空機: オリンピック作戦には、対FS用に大口径機銃を搭載した烈風、F4U、F7Fといった艦上戦闘機や、P-47（日本名：五式戦闘機「犬鷲」）、P-65「パファダー」といった陸上戦闘機が参加しました。また、重爆撃機B-29は、防御火器を強化し、対制動機用の特殊爆弾搭載改修機も投入され、作戦の「決戦機」として運用されました。これらの機体には、日米独ソなど様々な国のパイロットが搭乗しました。
トライポッド: 火星人の主力陸上兵器。原典のタイプに加え、大型タイプも登場。主兵装は熱線で、飛行ユニット装着により海上移動も可能です。操作タイプや電波妨害タイプなど派生型も存在。ドイツ軍ではドライペイン、日本軍ではタカアシガニとも呼ばれます。
フライング・スティングレイ (FS): 火星人の無人航空機。30mm以下の機銃を通さない防御力と、空中静止、直角機動など驚異的な運動性能を持ちます。電波誘導で操作され、IAMはこの点に着目し無力化を考案しました。
アンノウン・クリーチャー (UC): 本作に登場するもう一種の火星人。従来のタコ型支配種族とは異なると見られ、世代宇宙船で太陽系外から来た可能性が示唆されますが、詳細は不明です。
刊行情報
宇宙戦争1941: 2011年11月18日発売
宇宙戦争1943: 2012年6月8日発売
* 宇宙戦争1945: 2013年4月20日発売
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