宇宙探索編集部

廃刊寸前雑誌の編集長と、鍋をかぶった少年の宇宙への旅

2021年に公開された中国映画『宇宙探索編集部』（原題: 宇宙探索編輯部）は、かつて中国で人気を博したUFO雑誌『宇宙探索』の編集長タン・ジージュンと、不思議な力を持つ少年スン・イートンの物語を描いています。監督コン・ダーシャンは、本作で第36回金鶏奨最優秀編集賞を受賞しました。

物語は、30年前は人気を誇ったものの、現在は廃刊寸前となっている『宇宙探索』誌から始まります。編集長のタン・ジージュンは、雑誌の存続を賭け、部下や若い協力者たちと共に、四川省のとある村へと向かいます。この村では最近、夜空から謎めいた光が降り注いだり、村のシンボルである獅子の石像が咥えていた石の玉が消えたりするなど、不可解な現象が頻発していました。

光が目撃された家には、常に頭に鍋をかぶっている孤児の少年スン・イートンが一人暮らしをしています。イートンは、奇妙なことに頻繁に気絶しており、その度に頭を保護するために鍋をかぶっているのです。彼は、タンに自分が未知の地球外生命体と交信していることを打ち明けます。そして、石像から消えた石の玉を取り戻さなければ、激しい頭痛が止まらないと訴えます。

タンと彼のチームは、イートンと共に石の玉を探す旅に出ます。険しい山岳地帯にたどり着くと、突如イートンが行方不明になります。犬に襲われた部下を下山させるため、タンは他の仲間を帰し、一人でイートンの捜索を開始します。

山奥深くで、タンは古びた宇宙船の脱出カプセルのような物体を発見し、そこでイートンと再会します。イートンは、そこで旅の真の目的を明かします。実は、村で消えた石の玉はイートンが持っていて、それを元の場所であるこの地に戻すことが彼の使命だったのです。

タンはイートンに、もし正体不明の生命体が玉を取りにきたら、彼らに人類が宇宙に存在する意味を聞いてほしいと頼みます。これは、かつてうつ病で自殺したタンの一人娘が彼に残した最後の問いかけでした。しかし、イートンは「彼らにも分からないかもしれない」と答えます。そして、無数のスズメに囲まれると球体となり、空の彼方に消えていきました。

一ヶ月後、『宇宙探索』誌は休刊します。しかし、タンはイートンが消える際に見た宇宙の果ての景色を思い出し、いつか人類の存在意義を見つけ出せる日への希望を胸に抱き続けるのでした。この映画は、科学的な探求と、人間の心の深淵を同時に描いた、奥深い作品となっています。登場人物たちの葛藤や、宇宙と人間の関わり、そして存在意義といったテーマは、観る者に多くの問いかけを与え、深く考えさせられるでしょう。また、金鶏奨最優秀編集賞を受賞したことも、その完成度の高さを示しています。

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