宇都宮師管区

日本陸軍は、太平洋戦争末期の戦局が悪化する中、国内の防衛体制を強化し、兵員資源をより効率的に運用するため、1945年（昭和20年）4月1日付で大規模な軍事組織の改編を実施しました。この際に新たに設置された師管区の一つが、宇都宮師管区（うつのみやしかんく）です。この組織は、主に関東地方の北部地域を管轄範囲としました。具体的には、現在の栃木県、群馬県、茨城県の三県全域がその区域に含まれていました。

宇都宮師管区に課せられた主な任務は二つありました。一つは、徴兵制度に基づき兵役対象者を招集し、基礎的な訓練を施して部隊へ送るという軍事行政事務です。これは、枯渇しつつあった兵員を補充するための重要な機能でした。もう一つは、管轄区域における地域防衛計画の策定と実行、そしてそのための部隊編成や訓練です。これは、本土決戦の可能性が高まる中で、自らの地域を守るための防衛力を整備するという役割でした。

宇都宮師管区は、東部軍管区の隷下に位置づけられました。東部軍管区は、関東地方を中心とした東日本の広い範囲を管轄する上位の軍事行政組織であり、宇都宮師管区は、この東部軍管区を構成する師管区の一つとして、東京師管区や長野師管区などとともにその役割を担いました。

日本の敗戦後、陸海軍の解体が進められる中で、宇都宮師管区もその役割を終えることとなります。設置から約一年後、1946年（昭和21年）3月31日をもって正式に廃止されました。

師管区制度とその前身

師管区という制度は、それまでの師管制度を改称・再編したものです。従来の師管も軍事行政単位であり、特定の師団がその地域を管轄していましたが、師管区はより地域防衛の色合いが濃くなるとともに、軍事行政と防衛を一体的に担う単位としての性格を強めました。宇都宮師管区は、この改編に伴い設置されましたが、その管轄区域に関しては、前身である宇都宮師管の範囲がそのまま引き継がれており、地理的な変更はありませんでした。

宇都宮師管区の設立にあたっては、その前身である宇都宮師管を管轄していた部隊が大きく関わっています。宇都宮師管の管轄は、主に留守第51師団が行っていました。この留守師団は、本来の師団が外地などで戦闘している間に、国内に残って兵員補充や軍事行政を担う部隊でした。宇都宮師管区の司令部である宇都宮師管区司令部は、この留守第51師団の司令部を改称する形で発足しました。これにより、司令部の組織や人員の一部はそのまま引き継がれ、新たな任務に移行することになりました。

また、兵員の補充・教育という師管区の重要な機能に関連して、従来の留守師団に編成されていた補充隊は、一度その任務を終え、形式的には復帰（解散）されました。そして、宇都宮師管区の設置に伴い、新たな師管区部隊の隷下に補充隊が改めて編成されました。これは、師管区の任務体系に合わせて、補充部隊の組織と機能を再構築するための一連の手続きでした。

組織と人員

宇都宮師管区の組織は、師管区全体の統括を担う宇都宮師管区司令部を中心に構成されていました。司令部には、師管区司令官、参謀長、その他各種の幕僚や部員が配置され、軍事行政、地域防衛計画、人員管理、兵站などの業務を遂行しました。

師管区内には、実働部隊として宇都宮師管区部隊が編成されました。この部隊は、管轄区域内の防衛力の中核を担うとともに、徴兵されてきた新兵に対する基礎訓練や、既存部隊への補充要員の教育などを行いました。

また、宇都宮師管区の管轄区域は、さらに下位の行政単位である連隊区に区分されました。これは、師管区設置以前からの連隊区制度を引き継いだもので、宇都宮連隊区、前橋連隊区、水戸連隊区の三つが置かれました。これらの連隊区は、それぞれの管轄地域における徴兵実務、兵役に関する住民への告知、在郷軍人会との連絡調整など、より地域に密着した軍事行政事務を担当しました。

師管区の最高責任者である宇都宮師管区司令官には、設置と同時に予備役陸軍中将の関亀治氏が補職されました。関司令官は、師管区が機能していた期間の大部分を率い、1945年12月1日までその任にあたりました。師管区の運営を補佐する参謀長には、大佐の伴信也氏が司令官と同日の1945年4月1日付で就任しています。

終焉

第二次世界大戦が日本の敗戦によって終結した後、連合国軍最高司令官総司令部（GHQ）の指令に基づき、日本軍の全ての組織は解体されることになりました。宇都宮師管区もこの対象となり、軍事行政機関としての機能を停止しました。設置からわずか一年余り、戦時体制下で地域防衛と軍事行政の一端を担った宇都宮師管区は、1946年3月31日をもって正式に廃止され、その歴史的な役割を終えました。

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