守宮 (妖怪)

守宮（いもり）とは

守宮（いもり）は、日本の伝承に登場する妖怪の一種です。その名の読みは「いもり」ですが、実際に描かれるのは両生類のイモリではなく、爬虫類のヤモリの怪異です。この妖怪は、主に戦乱で命を落とした武士の霊が変化したものとされ、小人の姿で井戸の周辺に住み着くと伝えられています。

概要

江戸時代の怪異小説集『伽婢子』には、越前国湯尾（現在の福井県南条郡南越前町）での出来事として、守宮の怪異が描かれています。

ある時、塵外という僧が湯尾の城跡にある庵で書物を読んでいたところ、身長が4-5寸（約12-15センチメートル）ほどの小人が現れて話しかけてきました。塵外は驚くことなく書見を続けていましたが、その態度を無礼だと感じた小人は、仲間を呼び集め、塵外に襲いかかりました。塵外はたまらずにその場から逃げ出しました。

その後、塵外が村人にこの出来事を話すと、かつてこの城が戦で落城した際、多くの武士が命を落とし、その魂が古井戸に住み着いたのだと教えられました。塵外がその場所を訪れると、そこには無数の守宮（ヤモリ）がいました。塵外が経文を唱えて供養すると、守宮たちはたちまち消え去りました。

塵外は、災いは去ったものの、守宮たちのことを哀れに思い、村人たちとともにその亡骸を丁寧に葬ったとされています。

守宮の伝承は、戦で亡くなった武士たちの無念さや、その魂が安らかに眠れない状況を表していると考えられます。また、ヤモリという身近な生き物が、怪異として語り継がれてきたことも興味深い点です。

関連事項

* 日本の妖怪一覧

守宮は、日本の妖怪文化における重要な一例であり、その物語は、人々の想像力と死生観を反映しています。

もう一度検索