守屋富次郎

守屋富次郎

守屋富次郎（もりや とみじろう、1898年6月10日 - 1974年3月2日）は、日本の航空技術者であり、東京帝国大学、名古屋帝国大学、旅順工科大学教授、防衛庁技術研究所本部長、日本航空学会（現・日本航空宇宙学会）会長などを歴任した。
東京大学名誉教授であり、航空機の翼理論の権威として知られている。

概要

守屋富次郎は、岐阜県本巣郡真桑村上真桑（現・本巣市）に生まれた。県立岐阜中学、静岡県立静岡中学校に学び、静岡中学時代は野球部に所属していた。旧制第八高等学校を経て、東京帝国大学に入学。新設された同大工学部航空学科の第1期生として航空工学を学んだ。1923年3月には、卒業論文「Die Tragflügeltheorie.」（翼理論）を提出して卒業した。

東京帝国大学では講師、助教授を経て、1934年に教授に就任。1938年には、万国応用力学会議に日本代表として参加し、ヨーロッパの航空事情の調査・研究を行った。1940年から1945年にかけては、名古屋帝国大学、旅順工科大学などの教授を兼任した。

戦後、東京大学応用数学科教授を務めた。航空再開後の1953年度には、航空技術調査団長として再びヨーロッパにて調査を行った。その際、アメリカ航空諮問委員会（NACA）のような航空関係機関や共用の研究施設が日本にも必要であるとの要望を提出。その後、設立された航空技術審議会の委員を務めた。

F-104戦闘機の導入に伴い、対応する超音速練習機の必要性が高まった際、アメリカ製のT-38を導入するか、国内開発をするかの議論が起こった。当時、防衛庁技術研究所本部長であった守屋は、この機会に超音速機を開発しないと、永久に開発ができなくなると主張し、周囲に強く訴えた。その結果、T-2高等練習機の開発につながったという。

1966年には英国海外航空機空中分解事故の調査団団長、1973年には航空事故調査委員会委員長など、各種航空事故に関する委員も務めた。

著書

「飛行機の性能向上」『東京大学公開講座. 第1集』東京大学出版会、1953年
『力学概論』培風館、1953年
『Selected scientific and technical papers』Office of the Committee, Dept. of Aeronautics, Faculty of Engineering, University of Tokyo、1959年
『空気力学序論』培風館、1959年
『力学概論』鷲津久一郎共著、培風館、1968年

論文

守屋富次郎「複葉翼及螺進器翼ノ空気力学干渉ニ就キテ(英文)」東京帝国大学 博士論文（工学）、1930年
守屋富次郎「複葉の揚力に就きて」『東京帝國大學航空研究所雜録』第40号、東京帝國大學航空研究所、1927年
守屋富次郎「プロペラ翼の空気力學的干渉とプロペラの新しい理論」『機械學會誌』第33巻第159号、日本機械学会、1930年
守屋富次郎「プロペラに於ける誘起速度の計算圖表とプロペラ特性の計算法」『日本航空學會誌』第3巻第9号、日本航空宇宙学会、1936年
守屋富次郎「プロペラ翼に於けるBiot-Savartの法則の積分に就いて」『日本航空學會誌』第9巻第89号、日本航空宇宙学会、1942年
守屋富次郎「日本応用力学会発会に際して」『応用力学』第1巻第1号、日本航空宇宙学会、1948年
守屋富次郎「風力の利用について」『応用力学』第3巻第13号、日本航空宇宙学会、1950年
守屋富次郎「翼および翼列」『日本機械学会誌』第56巻第408号、日本機械学会、1953年
守屋富次郎, 近藤次郎, 高野暲, 谷喬「東京木学航空学科超音速風どうについて」『日本航空学会誌』第5巻第43号、日本航空宇宙学会、1957年
守屋富次郎, 河村竜馬, 木村秀政, 久保富夫, 北野純, 菊原静男, 渋谷厳, 萱場嘉郎, 箕田芳郎, 疋田遼太郎「遷音速機の設計について(座談会)」『日本航空学会誌』第5巻第39号、日本航空宇宙学会、1957年
守屋富次郎, 海法泰治「BOAC機の事故調査について」『日本機械学会誌』第72巻第608号、日本機械学会、1969年

守屋富次郎は、日本の航空技術の発展に大きく貢献した人物として、その名が記憶されるべきであろう。

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