安井正義

安井正義（やすい まさよし）は、1904年（明治37年）4月5日に愛知県愛知郡熱田町（現在の名古屋市熱田区）で、6男4女の長男として生を受けました。1990年（平成2年）8月23日に86歳で亡くなるまで、日本の経済界に大きな足跡を残した実業家です。

安井の父である安井兼吉は、1908年（明治41年）に安井ミシン商会を創業し、ミシンの修理と販売を始めました。この事業が、後のブラザー工業へと繋がる礎となります。1925年（大正14年）、兼吉の死去に伴い、正義は家業を継承し、安井ミシン商会を安井ミシン兄弟商会へと改称。ここからミシン製造への本格的な取り組みを開始しました。

1934年（昭和9年）、安井は組織を大きく変更し、日本ミシン製造株式会社を設立しました。これが現在のブラザー工業の前身であり、正義は社長としてその舵取りを担います。この時、安井は単なるミシンの修理販売から、自社でのミシン製造へと大きく舵を切りました。その決断は、後のブラザー工業の発展を決定づける重要な転換点となりました。

第二次世界大戦後、日本の経済が復興に向かう中、ブラザー工業はミシン製造だけでなく、多角的な事業展開を進めていきます。安井は、1950年（昭和25年）に会長に就任し、経営の第一線からは退きますが、その後もブラザー工業の発展を見守り続けました。

また、安井は経済界における活動も積極的に行い、1964年（昭和39年）には昭和法人会の会長を務めるなど、地域社会や業界の発展にも貢献しました。

安井正義の生涯は、日本のミシン産業の発展、ひいては日本の産業発展に大きく貢献したと言えるでしょう。父から受け継いだ家業を、自らの手で大きく飛躍させたその経営手腕、そして、時代を見据えた先見性は、後世に語り継がれるべきものです。

彼の著書の一つである『私の履歴書 経済人18』は、1981年2月に日本経済新聞社から出版され、当時の経済界の動向を知る上で貴重な資料となっています。

安井正義の功績は、現在もブラザー工業の企業理念として息づいており、その革新的な精神は、多くの人々に影響を与え続けています。ブラザー工業の歴史を語る上で、安井正義は決して欠かすことのできない、重要な人物です。

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