安本酒造

安本酒造：歴史と伝統が息づく福井の酒蔵

福井県福井市東郷地区に拠点を置く安本酒造は、1853年（嘉永6年）創業の長い歴史を誇る蔵元です。現当主は46代目（2017年現在）にあたり、代々受け継がれてきた酒造りの技と伝統を守り続けています。

安本家は平安時代から続く旧家で、地元に深く根付いた歴史を持っています。988年（永延2年）、一条天皇の命により地蔵院を槇山の山頂から現在の場所へ遷座する際、安本安兵衛が尽力したという伝承が残されています。しかしながら、1893年（明治26年）の大火により古文書が焼失したため、詳細な歴史は不明な部分も多いです。

酒造業を営む傍ら、戦国時代には両替商、農業、林業にも携わっていたという記録が残されています。明治時代には、安本安五郎が当主を務め、蔵元の発展に大きく貢献しました。安本安五郎は、銘柄「国府司」を福井県酒造組合主催の品評会や北陸三県酒醤油品評会に出品し、数々の褒章を受賞しました。地域貢献にも積極的に取り組み、村会議員や区長を歴任するなど、地元住民からの信頼も厚かったと伝えられています。

国の登録有形文化財に登録された歴史的建造物

安本酒造の敷地内には、1889年（明治22年）建築の店舗兼主屋を始め、米蔵、土蔵、仕込蔵など、明治中期から昭和戦前期にかけて建築された10棟の建物が今も残されています。これらの建物は、国の登録有形文化財に登録されており、その歴史的価値の高さが認められています。

間口45メートル、広さ1800平米の敷地には、住宅や蔵などの建物が立ち並び、かつての造酒屋の屋敷構えを今に伝えています。これらの建物の多くが、良好な状態で保存されていることから、「かつての建物がここまでまとまって残っているのは県内随一」と評価されています。歴史的建造物としての価値に加え、現在も酒造りに活用されている点も大きな特徴です。

地元産酒米と伏流水を生かした多様な銘柄

安本酒造では、約20種類の銘柄を製造しています。地元大野産の酒米「奥越五百万石」を主な原料とし、白山水系の伏流水を用いた仕込みによって、高品質な日本酒を造り出しています。

中でも「白岳仙 純米 ひだまり」は、2014年に世界最大級のワイン品評会であるインターナショナル・ワイン・チャレンジで日本酒部門純米酒銅メダルを受賞するなど、高い評価を獲得しています。その他にも、「白岳仙」、「しぼりたて吟醸生生」、「吟生」、「ひやおろし原酒」、「袋しぼり本醸造」、「純米吟醸奥越五百万石」、「純米吟醸山田錦十六号」、「純米吟醸備前 雄町」、「純米吟醸山田錦四十」、「大吟醸無濾過直詰」、「大吟醸 仙」、「にごりはっぽう」など、様々な銘柄がホームページで紹介されています（2017年11月18日確認）。

安本酒造は、歴史と伝統を重んじながら、現代の技術と感性を融合させた、質の高い日本酒を造り続けています。その取り組みは、地元福井のみならず、全国の日本酒愛好家から高い評価を得ています。

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