安永徹

安永徹：世界に羽ばたいたヴァイオリニストの軌跡

安永徹氏は、1951年福岡県福岡市に生まれました。音楽一家に育ち、幼少期から音楽に囲まれた環境で過ごしました。父は九州交響楽団の永久名誉指揮者、母は声楽家という恵まれた環境は、氏の音楽への道を決定づけたと言えるでしょう。13歳から江藤俊哉氏に師事し、音楽の基礎をしっかりと築き上げました。

桐朋学園大学音楽学部卒業後、安永氏はさらなる高みを目指し、1975年にドイツのベルリン芸術大学へ留学します。師事したのは、名教師として知られるミシェル・シュヴァルベ氏でした。この留学は、氏の音楽家としてのキャリアに大きな影響を与えました。

1977年、安永氏は世界最高峰のオーケストラの一つであるベルリン・フィルハーモニー管弦楽団に入団します。一般奏者からコンサートマスターに昇格した初めての日本人として、その卓越した演奏技術と音楽性が高く評価されました。ベルリン・フィル在籍中は、オーケストラの演奏活動だけでなく、ソリストや室内楽奏者としても活躍しました。1990年には、石井眞木氏の作品をベルリン・フィル弦楽ゾリステンで初演するなど、現代音楽にも積極的に取り組んでいました。

妻であるピアニストの市野あゆみ氏とのデュオ活動も盛んに行い、1991年にはリリースしたCD『安永徹・ヴァイオリン演奏会』が平成2年度文化庁芸術作品賞を受賞するなど、高い評価を受けました。また、ベルリン・フィル・カンマーゾリステンにも参加するなど、その活動は多岐に渡りました。

ドイツでの功績が認められ、2009年にはドイツ政府より独功労勲章・功労十字小綬章を受章しました。しかし同年、ベルリン・フィルを退団するという大きな決断をします。

ベルリン・フィル退団後は、拠点を日本に移し、北海道を拠点に活動を始めました。ソロ活動に加え、市野あゆみ氏とのデュオ、小編成の室内楽、指揮者を置かないアンサンブルなど、より自由度の高い音楽活動を展開しています。札幌コンサートホールのアソシエイト・アーティストにも就任するなど、地元北海道での音楽文化の発展にも貢献しています。さらに、2006年からは洗足学園音楽大学で後進の指導にもあたり、教育者としての顔も持ち合わせています。

安永徹氏の活動は、演奏活動にとどまりません。数多くのCDをリリースし、その高い音楽性は世界中に知られています。代表的なCDとしては、『安永徹・ヴァイオリン演奏会』やベートーヴェン、モーツァルトなどのヴァイオリンソナタ集などが挙げられます。

安永徹氏は、単なる演奏家としてだけでなく、音楽教育や文化交流にも積極的に携わり、音楽界に多大な貢献をしてきた人物です。その音楽人生は、後進の音楽家たちにとって、大きな刺激と指針となるでしょう。 氏の音楽活動は、これからも多くの人々に感動を与え続けることでしょう。

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