安田寿明

安田 寿明

概要

安田寿明（やすだ としあき）氏は、1935年（昭和10年）7月3日に兵庫県で生まれた日本の情報工学者です。黎明期のパーソナルコンピュータ（マイコン）の普及に大きく貢献し、情報化社会の未来像を先見的に描き出した人物として知られています。

経歴

1959年に電気通信大学を卒業後、読売新聞社での勤務を経て、東京電機大学の研究職に就きました。ここで、当時まだ一般には馴染みの薄かったコンピュータに関する研究・教育に携わります。

業績

安田氏の最も特筆すべき業績は、1970年代における個人向けコンピュータに関する活動です。1975年、コンピュータ専門誌『コンピュートピア』誌上で、個人がコンピュータを所有することの可能性を探る連載を開始しました。この連載の中で、彼は現代では当たり前となった「一人一台の情報端末」を持ち、それらがネットワークを通じて有機的に連携する、高度に情報化された社会が到来することを早期に予測しました。これは、大型計算機が主流だった当時の社会状況において、非常に先見の明がある見解でした。

さらに安田氏は、当時の最新マイクロプロセッサの一つであったIntel 8008を使用したコンピュータの具体的な製作方法を紹介しました。これにより、専門家ではない一般の人々でもコンピュータを組み立て、その仕組みを理解する道が開かれました。この技術解説は大きな反響を呼び、彼は関連する一連の著作シリーズを次々と刊行しました。これらの著作は、当時のコンピュータ技術に興味を持つ若い世代、いわゆる「マイコン少年」たちにとって、貴重な情報源となり、実践的な知識を習得する上で大きな助けとなりました。安田氏の啓蒙活動を通じてコンピュータの世界に足を踏み入れた多くの人々が、後に日本の情報通信産業において重要な役割を担う人材へと成長しました。

主な著作

安田氏は、専門的な内容を分かりやすく解説した多数の著書を世に送り出しました。初期のコンピュータ概論から、実践的なマイコン製作・活用法、そして未来の情報社会論まで、幅広いテーマを扱っています。代表的な著作としては、『マイ・コンピュータ入門―コンピュータはあなたにもつくれる』（講談社、1977年）や、シリーズとして刊行されたマイコン関連書籍が挙げられます。これらの書籍は、当時のコンピュータ技術への理解を深め、多くの人々にプログラミングやコンピュータの可能性を伝える役割を果たしました。また、翻訳書も手掛けており、コミュニケーション研究の古典であるE・M・ロジャーズの著作の翻訳なども行っています。

安田寿明氏は、理論的な探求と実践的な啓蒙活動の両面から、日本のコンピュータおよび情報通信分野の発展に貢献した、先駆的な情報工学者と言えます。

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