安達正勝

安達正勝氏は、1944年に岩手県盛岡市で生まれました。東京大学文学部仏文科を卒業後、同大学院修士課程を修了。その後、フランス政府給費留学生として渡仏し、パリ大学（第8）の博士課程に在籍しましたが、中途退学しています。帰国後は、いくつかの大学で非常勤講師を務めながら、フランスの歴史、特に伝記的な作品の執筆に力を注いでいます。

安達氏の著作は、フランス革命という激動の時代を生きた人々、特に女性たちに焦点を当てたものが多いのが特徴です。『暗殺の天使 シャルロット・コルデの生涯』では、革命期の混乱の中でマラーを暗殺した女性の生涯を、『マラーを殺した女』では、その事件の背景を深く掘り下げています。また、『フランス革命と四人の女』では、革命期を彩った女性たちの運命を描き出しています。

さらに、『ジョゼフィーヌ 革命が生んだ皇后』では、ナポレオンの妻として知られるジョゼフィーヌの生涯を、また『ナポレオンを創った女たち』では、ナポレオンの人生に大きな影響を与えた女性たちにスポットを当てています。これらの著作を通して、安達氏は歴史上の人物を単なる偶像ではなく、生身の人間として捉え、その内面に迫ろうとする姿勢がうかがえます。

また、『二十世紀を変えた女たち キュリー夫人・シャネル・ボーヴォワール・シモーヌ・ヴェイユ』では、20世紀を代表する女性たちの功績と人物像を紹介し、時代を超えた女性の生き方を示唆しています。

安達氏の著作は、単なる歴史の記述にとどまらず、人間ドラマとしての面白さを追求している点が魅力です。『死刑執行人サンソン 国王ルイ十六世の首を刎ねた男』では、死刑執行人の視点からフランス革命を描き出し、歴史の裏側にある人間模様を浮き彫りにしています。『フランス反骨変人列伝』では、フランスの歴史に名を残す異端の人々を取り上げ、その特異な生き様を通して、歴史の多様性を示しています。

その他にも、『物語フランス革命』、『図解雑学 フランス革命―ヴェルサイユ落日からナポレオン配流まで』、『フランス革命の志士たち　革命家とは何者か』、『マリー・アントワネット　フランス革命と対決した王妃』など、フランス革命を多角的に考察した著作も多数発表しています。

翻訳家としても活動しており、ベルナール・ピヴォー編『理想の図書館』、ロジェ・デュフレス『ナポレオンの生涯』、バルザック『三つの恋の物語』、オノレ・ド・バルザック『サンソン回想録　フランス革命を生きた死刑執行人の物語』などを翻訳しています。

安達正勝氏は、フランス文学の研究者として、また歴史家として、その豊富な知識と卓越した文章力で、フランスの歴史や文化を深く理解するための道標となっています。彼の著作は、読者に歴史の面白さを伝え、人間という存在への理解を深める上で、貴重な役割を果たしています。

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