完全犯罪 (小栗虫太郎)

『完全犯罪』について

概要

『完全犯罪』は、小栗虫太郎によって書かれた国産の短編探偵小説で、1933年に『新青年』に掲載された作品です。これが小栗虫太郎として世に出た初めての試みであり、彼のデビュー作となります。作品には松野一夫による挿絵が添えられ、中国の山村という独特な舞台設定が印象的です。

あらすじ

物語は193x年5月、進行中の第1次国共内戦を舞台に始まります。苗族共産軍が四川省から湖南省西端にある八仙寨への進入を果たし、その指揮官であるワシリー・ザロフは、英医エリザベス・ローレル夫人の邸に司令部を設けることになります。若干の不気味さを伴って、彼女の元にはポーランドからの娼婦ヘッダ・ミュヘレッツェが加わります。

ある晩、ローレル夫人がオルガンを演奏していると、ヘッダが異様な笑い声を上げ、その後、彼女が変死体で見つかります。捜査が開始され、ザロフは金の知識を駆使して真実に迫っていきます。ヘッダの部屋の密室状況に加え、彼女を目撃したとの証言もあり、事態は混乱を極めます。

事件の真相

ザロフと他の士官たちが捜査を進める中、様々な証言や証拠が次第に明らかになります。ヘッダは青化水素による毒殺であり、犯人は人種改良を信奉する者で、彼女の一族が持つ悪性遺伝を絶つことを目的としていました。最終的に、犯人は自身の持つ遺伝の事実を知り、自らの信念に基づき、「完全犯罪報告書」を残して自殺するという衝撃的な結末を迎えます。

登場人物

• - ワシリー・ザロフ: 本作の探偵役であり、苗族共産軍の指揮官。犯罪学や心理学に詳しい。
• - エリザベス・ローレル夫人: 八仙寨に住む英国人女医。自身の父の遺言に従い、長い間この地を離れない。
• - ヘッダ・ミュヘレッツェ: 苗族共産軍の娼婦。異様な笑い声を上げたことで事件に巻き込まれる。

発表の背景

小栗は初め、この作品を長編として書き上げ、先輩作家の甲賀三郎に送ったところ、その短さが評価されて『新青年』への掲載が決まりました。掲載前には他の著名な作家とは異なる独自のスタイルが話題となり、読者からも注目を浴びました。

評価と影響

この作品は日本の探偵小説でも異色の存在であり、海外を舞台に、国内の作家が全く登場しない構成が新鮮でした。また、小栗独特の文体により、当時の読者から翻訳だと思われるほどの反響が寄せられました。『完全犯罪』は、以降の小栗虫太郎作品にも影響を与え、彼の作風を確立する一助ともなりました。

附録

本作はその後も多くのアンソロジーや商業作品の中に収められるなどし、さらなる評価を受け続けています。小栗虫太郎文学の一端を担うこの作品が、現代における探偵小説の理解を深める力となることは間違いありません。

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このように『完全犯罪』は、単なる探偵小説という枠を超えた深いテーマやキャラクター描写、そして巧みなトリックによって、読者に強い印象を与え続けています。

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