宗教民俗学

宗教民俗学とは

宗教民俗学は、民俗学の一分野であり、特に民衆の信仰、すなわち民間信仰を研究対象とする学問です。キリスト教を対象とする場合、教会の教義とは異なる、民衆レベルでの信仰の実態や歴史を明らかにしようとします。この分野は、単に宗教的な側面だけでなく、文化や社会との関わりも重視し、多角的な視点から分析を行います。

ドイツにおける宗教民俗学の発展

宗教民俗学は、20世紀初頭のドイツにおいて、プロテスタントの神学者パウル・ドレーフスによって提唱されました。当初は、民衆への布教活動を視野に入れた実践神学の用語として用いられ、ドイツ各地で民衆の信仰習俗に関する大規模な調査が行われました。

その後、カトリック教会でも民衆信心の重要性が認識されるようになります。ただし、プロテスタント系の概念を避けるため、「教会民俗学」や「キリスト教民俗学」といった用語が用いられました。1920年代後半には、ゲオルク・シュライバーを中心に学問的な発展を遂げました。

1930年代には、カトリック教会が行政的な取り組みとして、ナチスによる町村の組織統合に対して、既存の村落組織と教会を結びつけることで、一定の抑止力を発揮した事例もあります。これは、宗教民俗学が単なる学問研究に留まらず、社会的な影響力を持つ可能性を示唆しています。

現代の宗教民俗学

現代では、宗派を問わず「宗教民俗学」という用語が一般的に用いられています。この学問分野は、特定の宗教に限定されず、世界各地の様々な宗教文化を研究対象としています。宗教と民俗文化の相互作用を理解することは、異なる文化間の理解を深める上で重要な役割を担っています。

参考文献

河野眞「ドイツ民俗学におけるローマ・カトリック教会とナチズム－特にゲオルク･シュライバーを中心とした宗教民俗学の位置付けをめぐって」愛知大学国際コミュニケーション学会『文明21』第4号（2000年3月）、5号（2000年10月）、後に河野眞『ドイツ民俗学とナチズム』創土社、2005年、pp.258-326 に「ゲオルク・シュライバーの宗教民俗学」として収録。
ヘルマン・バウジンガー著 河野眞訳『フォルクスクンデ・ドイツ民俗学－上古学の克服から文化分析の方法へ』文緝堂、2010年、pp.71-72.
* インゲボルク・ヴェーバー＝ケラーマン著『ヨーロッパ・エスノロジーの形成：ドイツ民俗学史』（2003年 アンドレーアス・C・ビマーとジークフリート・ベッカーによる改訂版）河野眞訳、文緝堂、2011年、p.130, p172.

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