実効湿度

実効湿度（じっこうしつど）

概要

実効湿度（He）は、単に現在の空気の湿度を示すだけでなく、過去数日間の湿度の履歴を考慮して算出される特別な指標です。この数値は、木材などの燃えやすい物質の乾燥状態をより正確に反映するとされており、特に火災の発生リスクを評価する上で非常に重要視されています。空気中の湿度が急激に変化しても、木材などがその湿度に完全に順応するには時間差があるため、過去の湿度の影響を継続的に考慮する必要があるのです。

算出方法

実効湿度は、当日を含む過去数日間の平均相対湿度に、時間的な減衰率を掛け合わせて合計することで算出されます。具体的には、以下の計算式で表されます。

$${\displaystyle H_{\mathrm {e} }=(1-r)(H_{0}+rH_{1}+r^{2}H_{2}+r^{3}H_{3}+\cdots )}$$

ここで、各項目の意味は以下の通りです。
$H_0$: 当日の平均相対湿度
$H_1$: 前日の平均相対湿度
$H_2$: 前々日の平均相対湿度
...
* $r$: 減衰率（直前の湿度の影響度合いを示す係数）

この計算式では、当日の湿度が最も大きく影響し、過去に遡るにつれてその影響が指数関数的に減少していくことがわかります。気象予報業務においては、減衰率 $r$ の値として通常0.7が用いられます。また、計算に含める過去の湿度の遡上日数については、通常は数日間とされますが、最も短い場合は前日のみを考慮することもあります。これは、計算の簡便さと、数日以前の湿度の影響が小さくなることを考慮したものです。

気象予報と乾燥注意報

実効湿度は、気象庁が発表する乾燥注意報の重要な判断基準の一つとして活用されています。乾燥注意報は、空気の乾燥によって火災が発生しやすい気象条件になった場合に発表されるものです。この際、単にその日の最小湿度（一日の中で最も湿度が低くなった時の値）だけでなく、実効湿度も併せて考慮されます。

乾燥注意報を発表するための具体的な基準値は、地域によって気候条件が異なるため、細かく設定されています。しかし、実効湿度に関する一般的な目安としては、概ね60パーセント前後が基準とされることが多いです。一方、最小湿度については、地域による基準値の差が大きい傾向にあります。

火災との関係

実効湿度が低い状態が続くと、木材や落ち葉などが乾燥しやすくなり、火がつきやすく、また燃え広がりやすくなります。統計的には、実効湿度が60パーセントから50パーセント以下になると、火災の発生件数が増加する傾向があることが知られています。これは、空気が乾燥しているだけでなく、可燃物自体が深部まで乾燥している状態を示唆しているためです。

まとめ

実効湿度は、過去の湿度の影響を考慮することで、物質の乾燥度や火災のリスクをより適切に評価するための指標です。気象情報として提供されるこの数値を理解することは、火災の予防や安全確保に役立ちます。特に空気が乾燥しやすい季節や地域においては、実効湿度の情報に注意を払うことが推奨されます。

もう一度検索