実測図 (考古学)

実測図とは

実測図（じっそくず）とは、考古学の分野で遺跡の発掘調査を通じて得られた遺構や出土遺物を、正確に測定し、視覚化した図面を指します。この図面は遺構の位置や形状、そして遺物の詳細な形状や大きさを記録するのに用いられ、発掘調査の重要な記録方法として根付いています。

実測図の概要

実測図は、遺構や遺物のデータを体系的に整理し、後の研究や保存に資する重要な資料となります。発掘作業においては、視覚的な情報を写真で捉え、実測図によって客観的な情報を記録します。これにより、遺物や遺構の理解が深まり、研究活動の支援が確立されます。

遺構の実測図

遺構の実測図は、様々な方法で作成されますが、一般的には以下の手順に従います。
1. 表土の除去：遺構が確認できる面が出るまで表土を取り除きます。
2. グリッド設定：国家座標に基づいて10メートルごとのグリッドを設定し、その後杭を打ちます。
3. 平面図作成：グリッドから水糸を用いて1メートルごとの方眼を作り、遺構をメジャーや平板で測定し、図に落とし込みます。近年ではトータルステーションと呼ばれる光波測距儀が利用され、測定結果は電子媒体に記録されます。これに加え、測量時間が限られている場合は空中写真を利用してデジタル処理を行うこともあります。
4. 断面図作成：遺構の断面や覆土の堆積状態についても記録します。この場合、特定の標高から深さを計測したり、写真を利用して理論的な断面図を生成します。特に覆土の堆積状況を示す断面図は「セクション図」とも呼称されます。実測図は通常、縮尺1/20または1/40で作成され、発掘報告書では1/60や1/80の縮尺が使用されることが一般的です。

遺物の実測図

出土した遺物の実測図に関しては、出土場所、発掘遺構、遺物番号を記載し、遺物を接合や復元した後にその形状や大きさを計測します。この際、正確な図化には、真弧と呼ばれる器具や定規を用いた伝統的な手法が用いられていましたが、近現代では電子機器を使用した方法が普及しています。これにより、画面に投影したり、写真をデジタル処理して図化することが可能となりました。

特に土器や陶磁器の場合、日本では、正面図において左半分には外面の文様や表面加工を、右半分には断面の厚さや内面の調整を示すことが多いです。これに対し、アメリカやイギリスをはじめとする欧米では逆の配置が一般的です。必要に応じて、器の底面や蓋の上面を示す場合もあります。

まとめ

実測図は考古学の基礎資料を形成し、それらは将来的な研究や保存活動において欠かせない存在です。技術の発展が進む中でも、実測図の正確性と客観性を確保することは、遺跡の理解や文化財保護において極めて重要な要素となっています。

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