実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約

実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約（WPPT）の詳細解説

概要

世界知的所有権機関（WIPO）によって1996年12月に制定された、実演家とレコード製作者の権利保護に関する国際条約です。著作権に関する世界知的所有権機関条約（WCT）と同時に作成され、デジタル化やネットワーク化の進展に対応した著作隣接権の保護強化を目指しています。特に、米国など、独自の著作隣接権制度を持つ国々の参加を促す目的もありました。2002年5月20日に発効し、日本は同年7月9日に加入、10月9日に効力が発生しています。この条約は、音楽、映画、演劇など、多様な分野における実演家とレコード製作者の権利保護に重要な役割を果たしています。

主要な規定

WPPTは、以下の重要な規定を含んでいます。

実演家人格権の規定: 実演家の氏名表示権や、実演内容の改変に対する異議申し立て権など、実演家の権利を人格権として明確に保護する規定が含まれています。これは、実演家の創造性と尊厳を尊重する上で重要な要素です。

インタラクティブ送信に関する権利の規定: インターネット上でのストリーミング配信やオンデマンド配信など、デジタル環境における実演とレコードの利用に関して、実演家とレコード製作者の権利を明確に規定しています。これにより、デジタル環境における著作隣接権侵害を防ぐための枠組みが構築されました。

レコード製作者の権利保護期間の延長: レコード製作者の権利保護期間を、レコードの発行から50年以上と規定しています。これは、レコード製作者の経済的利益を保護し、作品への投資を促進する上で重要な要素です。

技術的保護手段回避に対する法的救済: 著作権や著作隣接権で保護された作品への不正アクセスや複製を防止するための技術的保護手段（DRMなど）を回避する行為に対する法的救済措置を規定しています。これにより、著作権や著作隣接権の侵害を防ぐための技術的な対策の効果を高めることが期待されています。

その他の条約との関係

WPPT以外にも、WIPOや他の国際機関によって、著作隣接権に関する様々な条約が制定されています。例えば、視聴覚的実演の保護や放送機関の保護に関する条約の検討も行われており、2012年には視聴覚的実演に関する北京条約が作成されました。これらの条約は、それぞれ異なる分野の著作隣接権を保護するものであり、相互に補完的な役割を果たしています。 また、ローマ条約（実演家等保護条約）、レコード保護条約、WCT、TRIPS協定なども、著作権や著作隣接権の保護に関連する重要な国際条約です。

WPPTの意義

WPPTは、デジタル時代の著作隣接権保護において極めて重要な条約です。従来のアナログ環境における著作隣接権の保護を、デジタル環境にも適用できるよう拡張し、実演家とレコード製作者の権利をより効果的に保護する枠組みを構築しました。 日本も批准していることから、日本の著作権法にも大きな影響を与えており、音楽や映像業界など、多くの産業に影響を与えている重要な国際条約の一つと言えます。 WPPTは、クリエイターの権利保護と文化産業の発展に貢献する重要な役割を担っています。 今後のデジタル技術の進展に合わせて、その規定の見直しや新たな条約の制定などが検討される可能性も考えられます。

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