実相寺 (川口市)

本覚山 実相寺

埼玉県川口市領家にある本覚山実相寺は、日蓮宗に属する歴史ある寺院です。旧本山は大本山正中山法華経寺にあたり、日蓮宗の達師法縁（繁珠会）に連なります。特筆すべき本尊として、植髪鬼子母神を祀っていることで知られ、古くから安産や子育てなどの祈願所として信仰を集めてきました。かつては日蓮宗内において中本山という高い寺格を有しており、その歴史と伝統は現在も引き継がれています。

歴史

実相寺の起源は、貞治2年（1363年）に遡ります。この年、中山法華経寺の第三世である日祐上人によって、この地に法華堂が建立されたことが始まりとされています。その後、日祐上人の高弟であり、武将である本間五郎重元の孫にあたる日通上人が、明徳2年（1391年）にこの法華堂を正式な寺院として開創し、実相寺となりました。日通上人は実相寺の開山として仰がれています。

創建以来、実相寺は日蓮宗の教えを広める拠点として栄え、特にかつては中本山としての格式を認められる寺院でした。これは、日蓮宗の本山制度の中で一定以上の規模や影響力を持つ寺院に与えられた呼称であり、実相寺がかつて重要な役割を担っていたことを示しています。

しかし、明治時代に入って間もない明治9年（1876年）、実相寺は火災に見舞われ、惜しくも本堂を焼失するという不幸な出来事がありました。現在の本堂は、その後の復興を経て再建されたものです。

境内と本尊

実相寺の境内には、主要な堂宇として本堂が建ち、また鐘楼も備わっています。本堂には、当寺院が特に篤く信仰する植髪鬼子母神が祀られています。鬼子母神は仏教における安産・子育ての守護神として広く知られていますが、実相寺の植髪鬼子母神は、そのお姿に特徴があると考えられています。詳細な由来については伝承によりますが、この独特の名称からも、特別な信仰対象として大切にされてきたことがうかがえます。

旧末寺

かつて日蓮宗には本山と末寺の関係が明確に定められた本末制度が存在しましたが、昭和16年（1941年）にこの制度は解体されました。そのため、現在では「旧本山」「旧末寺」と呼びならわされています。実相寺には、かつて深谷市西島にある深西山圓受院が末寺として連なっていました。本末制度は廃止されましたが、寺院間の歴史的な繋がりを示すものとして記録されています。

実相寺に関する歴史的な記録は、江戸時代に編纂された地誌『新編武蔵風土記稿』にも「領家村 実相寺」として記載されており、その存在が古くから認識されていたことが分かります。また、日蓮宗寺院大鑑などの資料にもその歴史と概要がまとめられています。

本覚山実相寺は、七世紀近い歴史を持ち、植髪鬼子母神を祀る寺院として、今日まで地域の人々の信仰の中心であり続けています。創建から現代に至るまで、様々な出来事を経ながら、日蓮宗の教えと共に歩んでいます。

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