宮井勝成

宮井 勝成（みやい かつなり、1926-2020）は、日本の学生野球界において多大な功績を残した指導者です。選手としても母校で活躍した後、指導者の道を歩み、早稲田実業高校、そして中央大学の監督として、高校野球と大学野球の両カテゴリーで全国優勝を達成するという稀有な偉業を成し遂げました。

生涯とキャリア

東京府（現在の東京都杉並区）に生を受けた宮井氏は、早稲田実業時代に選手として1941年の選抜中等学校野球大会に出場しています。1944年には予科練に入隊。戦後、中央大学に進学し、早実では内外野を守り、中大では主に外野手、捕手として活躍し、主将も務めました。

大学卒業後は新日本証券に勤めましたが、体調を崩して2年で退職。実家の寿司店を手伝いながら、1954年に恩師である久保田高行監督の誘いを受け、母校の早稲田実業コーチに就任しました。

翌1955年、当時の監督の体罰問題を受けて後任となり、早実硬式野球部の監督に昇格。1957年の第29回選抜高等学校野球大会では、エースとして後のプロ野球界のスーパースターとなる王貞治投手を擁し、早実を甲子園初優勝へと導きました。これは、戦後初めて選抜大会の優勝旗が箱根の山を越えた出来事としても知られています。

中央大学での黄金時代

1959年春に不祥事で出場停止処分を受け、東都大学野球リーグの二部へ降格していた母校、中央大学硬式野球部の再建を託され、同年秋季から監督に就任しました。宮井監督就任後の中大は、1960年代から1970年代にかけて黄金時代を迎え、東都大学野球リーグで常に強豪・駒澤大学などと熾烈な優勝争いを繰り広げました。その勢いはリーグ内に留まらず、東京六大学リーグの強豪校などを次々と破り、全国の頂点を常に目指す存在となりました。

35年に及ぶ在任期間中に、東都大学リーグで実に22回、全日本大学野球選手権大会で3回、明治神宮野球大会で1回と、数多くの全国タイトルを獲得しました。1994年からは総監督を務め、長きにわたり母校野球部を牽引しました。

人物と晩年

プライベートでは、娘の芙美子が中央大学野球部での教え子であり、巨人V9戦士として知られる末次利光の妻であるなど、野球界との繋がりは深く続きました。

晩年も野球界との関わりは深く、2019年9月には、その年限りで現役引退を表明していた中大出身のプロ野球選手、阿部慎之助の試合を、母校野球部監督らとともに観戦する姿が見られました。

しかし翌2020年8月7日、肺がんのため、東京都三鷹市の病院で逝去。享年94でした。

主な指導者としての実績・役職

選抜高等学校野球大会優勝監督
全日本大学野球選手権大会優勝監督
明治神宮野球大会優勝監督
第2回・第8回日米大学野球選手権大会日本代表監督
全日本大学野球連盟専務理事
日本学生野球協会評議員
早稲田実業学校硬式野球部OB会会長

主な教え子（早実）

王貞治（巨人）
徳武定祐（国鉄、中日）
醍醐猛夫（ロッテ）
相沢邦昭（東映）
河原田明（東映）

著書

* 『軟式野球 はじめて野球を志す人のために』（日本文芸社：1980年6月）

宮井勝成氏は、その卓越した指導力と情熱をもって、数多くの名選手を育て上げ、日本の学生野球の発展に大きく貢献しました。高校と大学、二つの舞台で頂点を極めたその足跡は、今後も長く語り継がれることでしょう。

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