宮原庄助

宮原 庄助

宮原 庄助（みやはら しょうすけ）氏は、1884年（明治17年）5月18日にこの世に生を受け、1963年（昭和38年）5月8日に生涯を終えた、日本の漁業と政治の世界で重要な足跡を残した人物です。幼名を長松といい、現在の茨城県ひたちなか市にあたる那珂湊の地で生まれ育ちました。その人生は、地域社会の発展と人々の生活向上に捧げられました。

生い立ちと初期の経験

庄助氏は、那珂郡湊村牛久保（現在のひたちなか市牛久保）にて、漁業を営む宮原卯之松氏の長男として誕生しました。地域の湊尋常高等小学校で学びを終えた後、横須賀海兵団に入団するという道を選びます。この期間中、日露戦争に従軍するという経験を積み、その後に除隊しました。この軍隊生活での経験は、後の彼の人生観や行動に影響を与えたことでしょう。

漁業分野での活躍

1908年（明治41年）12月、庄助氏は家業である漁業を受け継ぎました。彼は単に家業を維持するだけでなく、漁業全体の改良と近代化に情熱を注ぎます。その経営手腕と業界への貢献が認められ、1920年（大正9年）2月には茨城製網株式会社の常務取締役に就任しました。また、地域や県の漁業関係団体の要職を歴任し、その振興に深く関わりました。

彼が関与した主な組織は以下の通りです。

湊漁業組合長
湊水難救済会長
那珂郡水産会長
茨城県漁業組合連合会長
茨城県漁船保険組合長
茨城県水産業会長
茨城県信用漁業協同組合連合会長
水戸魚市場取締役
日本油脂販売監査役
宮庄漁業社長

これらの役職を通じて、彼は地域の漁業従事者の地位向上や安全確保、産業全体の発展に大きく貢献しました。

政治家としての経歴

庄助氏は漁業の世界で実績を積む傍ら、地域社会への貢献を目指して政治の舞台にも進出します。1921年（大正10年）には湊町会議員に初当選し、以後5期にわたりその職を務めました。その後、1931年（昭和6年）9月には茨城県会議員に当選。1946年（昭和21年）まで3期にわたり県政に関わり、この間には県会議長という重責も担いました。

さらに、国政にもその活動の場を広げます。1946年（昭和21年）4月に行われた第22回衆議院議員総選挙では、茨城県全県区から日本進歩党公認候補として立候補し、見事に当選を果たしました。当選後は民主党に所属し、衆議院議員として1期務めました。国政の場では、進歩党の常議員会副会長などを務めるなど、党務においても一定の役割を果たしました。

那珂湊市政への貢献

国政を離れた後、庄助氏は再び地方行政の場でリーダーシップを発揮することになります。1951年（昭和26年）4月、那珂湊町長に就任しました。そして、1954年（昭和29年）3月31日に那珂湊町が市制を施行し、翌4月1日には初代那珂湊市長に就任しました。市長として、彼は1963年（昭和38年）4月30日まで約9年間にわたり市政運営の舵を取りました。

市長としての在任期間中、彼は那珂湊市の発展と市民生活の向上に精力的に取り組みました。特に力を入れたのは、教育施設の整備、市民の憩いの場ともなる福祉会館の建設、そして行政サービスの拠点となる市庁舎の新築です。また、市民生活に不可欠なインフラである上水道の整備にも尽力し、都市基盤の充実に貢献しました。

米軍機事故への対応

庄助氏の市長在任中の特筆すべき出来事として、1957年（昭和32年）に発生した米軍機母子殺傷事件への対応が挙げられます。彼はこの痛ましい事故に対し、迅速かつ毅然とした態度で臨みました。直ちに基地対策委員会を設置し、米軍基地司令官に対して事故の原因究明と、期間中の演習中止を強く申し入れました。さらに、この事件を契機に、水戸射爆撃場の返還を求める市民運動の先頭に立ち、基地問題の解決に向けて積極的に活動しました。

生涯の締めくくり

初代那珂湊市長として市の発展に尽力した宮原庄助氏は、1963年（昭和38年）4月末に市長を退任しました。そして、そのわずか数日後の同年5月8日に、78歳でその生涯を閉じました。漁業家として地域の産業を支え、政治家として地方から国政まで幅広く活躍し、特に初代那珂湊市長として市政の基礎を築き上げた彼の功績は、今日のひたちなか市の発展に大きな影響を与えています。彼の生涯は、地域社会への深い愛と奉仕の精神に貫かれていました。

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