宮崎富次郎 (初代)

初代 宮崎 富次郎（みやざき とみじろう、1882年 - 没年不明）は、日本の実業家であり、現在の宮崎家に連なる事業の基礎を築いた人物です。特に金属加工業においてその才能を発揮し、宮崎製作所を設立しました。世界的なアニメーション監督である宮崎駿氏は孫にあたります。

生い立ちと事業の萌芽

富次郎は1882年（明治15年）に東京都で奥村勝蔵の長男として生まれました。その後、宮崎浅吉の養子となり、新たな姓を名乗ることになります。青年期には製錠業、すなわち鍵や錠前を作る技術を習得しました。この専門技術が、後の彼の事業家としてのキャリアの礎となります。

1904年（明治37年）、彼は独立を果たし、金属雑貨の製造および販売を手がける個人事業を開始しました。独立から事業を拡大し、最終的には宮崎製作所を創業し、その代表取締役に就任しました。これにより、彼の事業は組織的な形態へと発展しました。

事業継承と戦時下

富次郎は自身の事業を長男の芳太郎に託しました。芳太郎は22歳という若さで事業を引き継ぎ、2代目 宮崎 富次郎を襲名します。この時期、事業は航空機産業とも関わりを持ち、芳太郎は宮崎航空工業の社長として、終戦に伴う会社解散までその責任を全うしました。初代富次郎から受け継がれた事業は、時代の変遷を経て形を変えながらも継続されていきました。

人物像と信仰

個人の側面としては、富次郎は天台宗を深く信仰していました。また、趣味は釣りであったと伝えられており、多忙な事業家としての顔とは別に、静穏な時間を持つ一面も伺えます。

家族構成

富次郎の家庭は以下の通りです。

妻：千代子
1884年（明治17年）生まれ。安達菊松の四女にあたります。
長男：芳太郎
1909年（昭和42年）6月23日生まれ。
米沢高等工業学校を卒業後、父の事業を継ぎ2代目 宮崎 富次郎となりました。
戦後は東洋ラジエーター株式会社（現在の株式会社ティラド）の社長を務めるなど、日本の産業界で活躍しました。
次男：勝次
1914年（大正3年）1月2日生まれ。
早稲田大学専門部商科を卒業。
東洋ラジエーター株式会社の常務取締役や、宮崎航空工業の専務取締役を歴任しました。
孫：駿
1941年（昭和16年）1月5日生まれ。次男・勝次の次男にあたります。
学習院大学政経学部を卒業後、アニメーションの世界に進み、現在は世界的に著名なアニメーション監督として知られています。
曽孫：富夫
長男・芳太郎（2代目富次郎）の孫。
慶應義塾大学大学院理工学部修士課程を修了。
現在の株式会社ティラドにおいて代表取締役 CEO 兼 COO 社長執行役員を務めており、曾祖父・初代富次郎、祖父・2代目富次郎から続く事業の流れを受け継いでいます。

初代 宮崎 富次郎は、製錠技術を基盤に金属加工業を興し、事業を拡大、息子に継承することで、現代まで続く宮崎家の事業と一族の発展の礎を築いた実業家です。彼の始めた事業は形を変えながらも継承され、その血脈からは日本の、そして世界の文化に大きな影響を与えた人物も生まれています。彼の没年は不明ですが、その功績は確かに刻まれています。

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参考文献

人事興信所 編『人事興信録 第13版下』人事興信所、1941年
* 稲門紳士録刊行会 編纂『稲門紳士録』稲門紳士録刊行会、1980年

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