宮崎県資産家拉致事件

宮崎県資産家拉致事件

宮崎県資産家拉致事件は、1994年3月27日に宮崎県小林市で発生したオウム真理教による誘拐事件であり、組織に関連する重大な犯罪の一つです。この事件の被害者は、旅館を経営していた男性で、その家族には5人の娘がいました。そのうちの一人は幼少期に亡くなっており、残る4人（A、B、C、D）はそれぞれオウム真理教への入信を経験しました。

事件の発端は、被害者が所有していた山林を9300万円以上で売却したことにあり、オウム真理教はこの資産に目を付け、同男性を誘拐する計画を立てました。1994年3月6日、被害者は山林を売却し、3日後に一部の金額が銀行口座に振り込まれる予定でした。このタイミングを狙い、教団は財産を奪うために行動を開始しました。

事件当日の夜、被害者の娘Cが父親に睡眠薬を盛り、オウム真理教に協力する井上嘉浩の手引きにより、父親は教団の医院に連れ去られました。オウム真理教に入信していないAが異変に気づき、すぐに救出に向かいましたが、父親はすでに教団のサティアン（施設）に移送されていました。Aが父親を監禁されている場所に急行するも、そこでは財産を横取りしようとする教団の企みが進行していましたが、父親の事前の対策によりその試みは失敗に終わります。

拉致された男性は約5ヶ月間にわたり監禁され、そのうち3ヶ月は薬物を投与され続け、体重は14キロも減少しました。教団は彼に対して、外界は危険で自分たちは毒ガス攻撃を受けていると信じ込ませました。最終的には、教団に逆らわずに帰依しているふりをし、財産を布施する意向を示したことで、ようやく1994年8月21日に解放されることができました。

事件後、被害者は、拉致に関与した娘たちと教団の顧問弁護士である青山吉伸を告訴しました。その際に、会見場では娘が乱入し、父親に対して「だまされないで！」と強く訴えかける場面がありました。これは、教団の影響力の下で起こる家族間の悲劇的な対立を象徴しています。

この事件は宮崎地方裁判所に持ち込まれ、BとC、そして教団の福岡支部長に対して、懲役2〜3年の実刑判決が下されました。この事件はオウム真理教が行った数多くの組織的犯罪の中でも特に顕著なものとして位置付けられており、教団による被害者の心理的、身体的な傷害を浮き彫りにしています。

脚注

この事件については、組織の信者がどのように家族との絆を断ち切られ、同時に個人の自由を奪われていくのかといった社会的な問題を提起する重要な事例となっています。

関連項目

• - 布施
• - 松本サリン事件に関する一考察

もう一度検索