宮平貴子

宮平貴子（みやひらたかこ）

日本の映画監督、そして映画プロデューサーとして活躍する宮平貴子は、1979年に沖縄県那覇市で生を受けました。歌手のji ma maは実姉にあたります。

映画への道のりと初期キャリア

宮平が映画制作の道を歩み始めたのは、沖縄国際大学に在学していた頃に短編映画を作り始めたのがきっかけです。その後、カナダ出身の映画監督クロード・ガニオンの作品『リバイバル・ブルース』（2002年）にカメラ助手として参加した経験が、長編映画の世界への志をより一層強いものとしました。大学卒業後はフリーランスとして活動し、沖縄の映画制作現場で多様な経験を積みます。特に、再びクロード・ガニオン監督作である『KAMATAKI -窯焚-』（2005年）ではチーフ助監督を務め、モントリオール世界映画祭で5部門を受賞した同作品の製作に深く関わりました。さらに、ドキュメンタリー作品の撮影や編集なども手掛け、映像制作の幅広いスキルを磨いていきました。

監督デビューと国際的な評価

2008年、宮平はユリ・ヨシムラ・ガニオンと共同で脚本を執筆した『アンを探して』で、満を持して長編映画監督としてデビューを果たします。この作品は、お笑いコンビ「とんねるず」の石橋貴明の娘である穂のかが主演を務め、国内外で注目を集めました。特に2009年にシンガポールで開催された第5回アジアン・フェスティバル・オブ・ファースト・フィルムズ（AFFF）においては、日本人監督として初めて、最高賞であるグランプリ（最優秀映画賞）と最優秀監督賞を同時に受賞するという歴史的な快挙を成し遂げ、その才能を世界に知らしめました。

沖縄を拠点としたプロデュース活動

2011年からは活動拠点を故郷の沖縄に移し、プロデューサーとしても本格的に活動を開始します。初めてプロデュースした作品は、再びクロード・ガニオン監督がメガホンをとった『カラカラ』でした。この作品は、第36回モントリオール世界映画祭で「世界に開かれた視点」賞と観客賞を受賞し、プロデューサーとしてもその手腕が高く評価されました。以降も、沖縄在住のスイス人写真家ダニエル・ロペスによるドキュメンタリー映画『カタブイ-沖縄に生きる-』（2013年）など、沖縄の自然、文化、そして人々の暮らしに深く根ざしたテーマの作品製作を積極的に手掛けています。

こども国際映画祭in沖縄＜KIFFO＞の立ち上げ

宮平の活動は、映画制作だけに留まりません。自身が子どもの頃に映画を通じて世界を感じた経験や、映画祭運営を通じて視野が広がったという思いから、2014年には『こども国際映画祭in沖縄＜KIFFO＞』を立ち上げました。「いろんな人の笑顔が増える社会」を実現することを目的としたこの映画祭は、毎年11月に開催され、沖縄の子どもたちに映画を通して多様な価値観に触れる機会を提供しています。立ち上げ当初は協賛企業が1社でしたが、回を重ねるごとにその活動への賛同が広がり、第5回開催時には22社もの企業が支援するまでに成長しました。来場者数も過去最高を記録するなど、沖縄における文化振興のイベントとして定着しつつあります。

次世代育成への貢献とその他の活動

KIFFOの活動は、沖縄の次世代を担う子どもたちのキャリア形成にも大きな影響を与えています。例えば、映画祭に関わった経験が自信につながり、不登校だった状態から回復して社会で活躍するようになった若者や、映画祭をきっかけに映像制作の道に進み、大学卒業後にテレビ制作会社へ就職、自主制作短編が映画館で上映されるまでになった若者など、具体的な成果が生まれています。宮平は、映画祭を通じて子どもたちの才能を育み、将来への道を拓くキャリア教育にも力を入れているのです。

さらに、宮平は国際的な交流や地域貢献活動にも積極的に関わっています。2018年2月には、KIFFOの活動が評価され、日本の若手リーダーとしてドイツ外務省の招待プログラムに参加し、世界の若手映画人との交流やベルリン国際映画祭の訪問を通じて国際的な視野を広げました。2015年には、沖縄フィルムツーリズム推進事業として制作された短編映画『わたしの宝もの』が第22回キンダーフィルムフェスト・きょうとでグランプリを受賞し、韓国やドイツの映画祭にも招待されるなど、子ども向けの映像作品制作でも成果を上げています。また、2018年には、沖縄へのジャイアントパンダ誘致を目指す「沖縄パンダプロジェクト（OPP）」の呼び掛け人として記者会見を行うなど、映画という枠を超えた多様な社会活動にも取り組んでいます。

宮平貴子は、自身の豊かな映画制作経験と沖縄への深い愛情を原動力に、国内外で評価される作品を生み出す一方で、故郷における映画文化の普及と次世代の人材育成にも情熱を注いでいます。その活動は、沖縄から世界へ向けた文化発信の重要な一翼を担っています。

主な受賞歴には、アジアの新人[映画祭]での最優秀監督賞（2009年）や、琉球新報活動賞文化・芸術活動部門（2012年）があります。著書として、共著で映画『アンを探して』のシナリオ採録も出版されています。

（注：フィルモグラフィーは本文中に含め、別途リスト化はしていません。）

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