宮廻正明

宮廻 正明（みやさこ まさあき）は、1951年1月24日に島根県松江市で生まれた日本の日本画家です。

絵画の世界への道は、まず地元の島根県立松江南高等学校を卒業後、東京芸術大学へと続きます。1975年に同大学の美術学部デザイン科に入学し、大藪雅孝氏に師事して絵画の基礎や表現技法を深く学びました。1979年に大学を卒業した後も研鑽を続け、1981年には同大学院修士課程を修了しています。

大学院修了と同時に、宮廻氏は東京芸術大学大学院美術研究科保存修復技術研究室の非常勤助手として大学に残ります。ここでは日本画の巨匠である平山郁夫氏に師事する機会を得て、さらに自身の芸術を高めていきました。その後、1986年には同研究室の非常勤講師となり、後進の指導にもあたり始めます。1995年には大学院美術研究科文化財保存学専攻日本画研究室の助教授に昇任し、文化財としての日本画の保存と研究、そして教育に力を注ぎました。2000年には教授に就任し、日本画分野における教育・研究の中心的な役割を担います。2009年には学長特命社会連携センター長を兼任するなど、大学運営においても重要なポストを務めました。長きにわたる東京芸術大学での活動を終え、2018年に定年退職。これまでの功績を称えられ、同大学の名誉教授の称号を得ています。

日本画の主要な団体である日本美術院においても、宮廻氏は重要な地位を占めてきました。1984年に院友となり、その活動を認められるようになります。1995年には日本美術院の同人という、限られた実力者のみが選ばれる地位に推挙されました。さらに2006年には評議員を務め、団体の運営にも深く関与するようになります。現在も同人であると同時に、日本美術院の常務理事として中心的な役割を担っています。

美術界における宮廻氏の活動は多岐にわたり、公益財団法人文化財保護・芸術研究助成財団の理事長として文化財の保護や芸術活動への助成にも尽力しています。また、島根県にある足立美術館では評議委員長を務め、山種美術館の理事としても活動するなど、美術館運営や美術振興においても影響力を持っています。

しかし、2020年に宮廻氏のキャリアにおいて大きな出来事がありました。同年7月17日からそごう美術館で開催される予定だった「第75回春の院展」に出品された彼の作品「銀河鉄道」について、開幕前日の7月16日にSNS上で、ロックバンド「ソウル・フラワー・ユニオン」のCDジャケットに用いられた写真と構図などが酷似しているとの指摘が多数寄せられました。この事態を受け、日本美術院は速やかに対応し、初日の17日には当該作品の展示を撤去することを決定しました。

さらに日本美術院は事実関係を詳細に把握するため、倫理委員会を設置して調査を進めました。その調査の結果、作品と写真との類似性は否定できず、日本美術院同人としての道義的な責任を看過することはできないと判断されました。これは「公益財団法人日本美術院同人倫理規則」に抵触する行為であると結論づけられたのです。これを受けて、日本美術院は2020年7月18日に臨時理事会を開催し、同日付で宮廻正明氏に対して役員の辞任勧告を行うと共に、今後1年以上の期間、謹慎処分（院展への出品資格及び同人としての審査資格の停止）を下すことを決定しました。この一件は、美術界における著作権や倫理、表現のオリジナリティに関する議論を改めて喚起することとなりました。

もう一度検索