宮武外骨

宮武外骨：反骨のジャーナリスト、風俗史研究家の生涯

宮武外骨（みやたけ がいこつ、1867-1955）は、明治・大正期を代表するジャーナリスト、著作家、そして新聞史研究家です。ジャーナリストとしては、政治家や官僚、メディアといった権力機構の腐敗を鋭く批判し、言論の自由を訴え続けました。一方、風俗史研究家としては、東京大学に明治新聞雑誌文庫を設立するなど、日本の近代文化史研究にも大きく貢献しました。

パロディから反骨のジャーナリズムへ

香川県に生まれた宮武は、幼い頃から農家の生活に反発し、上京してジャーナリストの道を歩みます。17歳で本名を「外骨」と改名。これは幼名「亀四郎」の「亀」が「外骨内肉」であることに由来する、皮肉にも公的機関ではたびたび「号」と誤解された名前です。

初期は比較的穏健な論調でしたが、次第に反骨精神を強め、自ら新聞・雑誌を刊行して、政治や権力への痛烈な批判を展開。そのため、発禁処分や投獄を何度も経験しました。特に官僚を宿敵と見なし、徹底した権力批判を貫きました。

代表作である『滑稽新聞』（1901年創刊）は、時事批評から世相風俗まで幅広く扱い、現代の週刊誌に相当する内容でした。パロディーや言葉遊びを駆使した独自のスタイルは、当時の大衆に大きな人気を博しました。活字による文字絵や縦読みといった、現代のウェブサイトでも見られる技法の先駆け的な試みも見られます。

しかし、その過激な言論は、当局の怒りを買い、『滑稽新聞』は1908年に発行禁止処分を受けます。それでも宮武は『大阪滑稽新聞』を創刊するなど、ジャーナリストとしての活動を続けました。

風俗史研究への転身と明治新聞雑誌文庫

関東大震災以降、宮武は風俗史研究に活動の重心を移します。1927年には、瀬木博尚からの寄付により、東京帝国大学（現・東京大学）に明治新聞雑誌文庫を設立。自ら事務主任として、膨大な新聞・雑誌資料の収集・整理に尽力しました。この文庫は、日本の近代文化史研究にとって貴重な資料として、現在も活用されています。

晩年とその後

戦後も、GHQによる検閲や発禁処分に遭いながらも、言論の自由を訴え続けました。1949年に東京大学を退職し、1955年に死去。享年89歳でした。

宮武外骨は、生涯にわたって権力に屈することなく、独自の視点と表現で時代を切り開いたジャーナリストであり、風俗史研究家でした。数々の発禁処分や投獄を経験しながらも、その活動は、現代のジャーナリズムや言論の自由を考える上で、重要な示唆を与えてくれます。彼の生涯と業績は、日本の言論史、文化史において、常に重要な位置を占めていると言えるでしょう。

家族と親族

宮武は複雑な家庭環境の中で育ちました。彼の父は庄屋を継ぎながら酒造業なども営んでいましたが、宮武自身は農家に縛られる人生を嫌悪し、ジャーナリストとして独立しました。兄の宮武南海も出版社経営や政治活動など、多方面で活躍しました。

宮武自身の私生活も波乱万丈でした。若くして妻と子を亡くし、その後も複数の女性と結婚・同棲するなど、私生活においても奔放な生き方をしました。最後の妻である稲田能子の妹の子である吉野孝雄は、宮武の伝記や著作の復刻にも尽力しました。

刊行物と著書

宮武は生涯を通して多数の雑誌、新聞、書籍を刊行しました。その多くは発禁処分を受けたり、短命に終わったりしましたが、彼のジャーナリズム精神と表現力は、後の世代にも大きな影響を与えました。特に『滑稽新聞』、『スコブル』などは、その独特のスタイルと社会批判で知られています。また、風俗史に関する著作も多数残し、これらは現在も貴重な資料として研究されています。

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