宮益坂ビルディング

宮益坂ビルディング：渋谷の街を見つめてきた歴史と未来が交差する複合施設

宮益坂ビルディングは、東京都渋谷区渋谷3丁目に建つ複合商業施設です。2020年8月に竣工したこの建物は、1953年竣工の旧宮益坂ビルディングの建て替え事業として誕生しました。旧ビルは日本で最初の分譲マンションとして知られ、最先端の設備を備えた先駆的な存在でした。地上11階、地下1階建てで、店舗、事務所、住宅区画を備え、エレベーターガールやダストシュート、セントラルヒーティングなど、当時としては画期的な設備が導入されていました。

しかし、長年の歳月を経て建物の老朽化が進み、周辺環境の変化にも対応する必要性が高まりました。1990年代から建て替えが検討され始め、権利者たちの尽力と、リーマンショックによる計画頓挫といった困難を乗り越え、2016年に権利変換許可を得て、ついに現在の姿となりました。

新しい宮益坂ビルディング：多様なニーズに対応する空間デザイン

新築された宮益坂ビルディングは、地上15階、地下2階建ての規模を誇ります。旧ビルの歴史を継承しつつ、現代のニーズに応える洗練された空間設計が施されています。

商業施設は1階と3階の一部に7区画、オフィスは2階、3階の一部、4階に26区画配置されています。住宅は5階から15階に128戸が設けられ、住戸タイプも多様化されており、ホテルライクな生活やSOHO的なワークスタイルなど、現代の多様なライフスタイルに対応できる設計となっています。

特に注目すべきは、住宅部分のエントランスホールです。旧ビルの2層吹き抜けや回り階段、シャンデリアといった特徴的な空間構成を再現し、新旧の銘板を併設することで、歴史へのリスペクトを表現しています。また、従来のnLDKの概念にとらわれず、1室空間へとプラン変更可能なスタジオプランも提供され、柔軟な住空間の提供に力を入れています。店舗・事務所区画と住宅区画のエントランスは完全に分離・独立しており、宮益坂側と東京メトロ銀座線側、ヒカリエデッキと、2方面からのアクセスが可能です。

グッドデザイン賞受賞：デザイン性と機能性の融合

宮益坂ビルディングは、その優れたデザイン性と機能性から、2021年度グッドデザイン賞を受賞しました。単なるビルディングではなく、歴史と現代が融合した、渋谷の街のランドマークとして、高い評価を受けています。渋谷の街の変遷を見守り続けてきたこの建物は、これからも人々の生活を支え、街の未来を彩っていくことでしょう。

参考文献

『市街地再開発』2020年11月号
『新建築』2021年2月号

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