家族 (アルバム)

長渕剛の15枚目のオリジナルアルバム『家族』：原点回帰と社会への怒り

1996年1月1日、長渕剛の15枚目のオリジナルアルバム『家族』がリリースされました。前作から約2年ぶりとなる本作は、数々の騒動を乗り越え、音楽活動に復帰した彼にとって大きな意味を持つ作品となりました。全作詞・作曲、そしてプロデュースは長渕剛自身の手によって行われ、唯一「家族」の作詞には作家の高山文彦氏が参加しています。

アルバム制作の背景：数々の困難と葛藤

1994年は、長渕剛にとって困難な年でした。ライブツアーの中止、不倫報道、そして桑田佳祐氏との激しい確執など、数々のトラブルに見舞われました。特に桑田氏との騒動は、芸能界全体を巻き込む大事件となりました。長渕氏は桑田氏に直接対決を申し込むなど、強い怒りを露わにしました。しかし、桑田氏からの返答はなく、事態は収束を迎えることはありませんでした。この騒動は、長渕氏の家族にも大きな影響を与えたと伝えられています。

1995年1月には、阪神・淡路大震災が発生。そして同月24日、長渕剛は大麻取締法違反で逮捕されました。大麻所持は認めましたが、覚醒剤使用容疑は否定。尿検査でも陰性反応だったため、処分保留のまま釈放され、3月には不起訴処分となりました。一連の騒動により、活動を一時休止せざるを得なかった長渕剛でしたが、同年10月にはシングル「友よ」をリリースし、活動を再開しました。同年11月には全国ツアーも開催され、復活への道を歩み始めました。

レコーディング：日本国内での制作

『家族』のレコーディングは、全て日本国内で行われました。前作までの海外ミュージシャン起用を避け、日本のミュージシャンとの協働によって制作されました。瀬尾一三氏との共同プロデュース体制のもと、長渕剛の旧友である山梨鐐平氏を始めとする実力派ミュージシャンが参加しています。レコーディングとミックスダウンは、BURNISH STONEで行われました。

音楽性：アコースティックサウンドと社会への怒り

『家族』は、アコースティックサウンドを基調とした作品です。アップテンポな曲は少なく、全編を通して落ち着いた雰囲気で聴くことができます。音楽評論家からは、長渕剛の「喋るように歌う表現」や、楽曲のテンポ、音像などが評価されています。歌詞には、理不尽な出来事や社会への怒り、家族への愛などがストレートに表現されています。特に「三羽ガラス」や「耳かきの唄」は、社会への批判と、自身の内面を深くえぐるような作品として注目を集めました。これらの楽曲は、長渕剛が当時抱えていた苦悩や怒りが直接的に表現されていると言えるでしょう。

リリースとプロモーション：テレビ出演と再リリース

『家族』は、CTとCDの2形態でリリースされ、オリコンチャートでは最高位3位を記録しました。プロモーション活動として、長渕剛はフジテレビ系音楽番組『HEY!HEY!HEY! MUSIC CHAMP』に出演し、ダウンタウンとの初共演を果たしました。また、2006年には24ビット・デジタルリマスター仕様でCDが再リリースされました。

アルバムアートワークとツアー

アルバムのライナーノーツは、湯川れい子氏が執筆を担当しています。本作を基にしたコンサートツアー「LIVE'96 KAZOKU」は、1996年5月から10都市14公演にわたって開催されました。ツアーの模様は、ライブアルバム『LIVE COMPLETE '95～'96』としてリリースされています。

批評：高い評価と時代背景

『家族』は、音楽評論家や音楽情報サイトから高い評価を受けています。アコースティックサウンドを基調とした楽曲、社会への批判、そして家族への深い愛情などが評価のポイントとして挙げられています。また、当時の社会情勢や長渕剛自身の置かれていた状況を考慮することで、本作の真価をより深く理解できるとする意見もあります。

収録曲

アルバムには全10曲が収録されています。代表曲である「友よ」や「傷まみれの青春」の他、「三羽ガラス」「月が吠える」「一匹の侍」「耳かきの唄」「何故」「家族」「己」「身をすててこそ」といった楽曲が収録されています。それぞれの楽曲には、長渕剛自身の経験や社会への鋭い視点が込められています。

まとめ

『家族』は、数々の困難を乗り越えた長渕剛の、音楽家としての真摯な姿勢が感じられる作品です。アコースティックサウンドを基調とした、静かで力強い楽曲は、多くのリスナーの心に響きました。本作は、長渕剛のキャリアにおいても重要な作品として位置付けられています。

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