富士市コミュニティバス

富士市コミュニティバス・デマンドタクシー

静岡県富士市では、市民の日常生活における移動を支える重要な手段として、コミュニティバスとデマンドタクシーが運行されています。これらは、市が定める「富士市地域公共交通総合連携計画」に基づき、既存のJR線、岳南電車、路線バスといった広域・都市間・地域間輸送を担う交通機関を補完し、地域内の細やかな移動ニーズに応えるネットワーク機能を担うことを目的としています。

運行の背景と費用負担

富士市は、公共交通を社会的なインフラと位置づけ、地域の実情に応じた多様な交通手段が連携するバランスの取れた都市交通体系の実現を目指しています。特に、路線バスの廃止などにより公共交通の利便性が低下した地域や、もともと公共交通が十分でなかった地域において、これらのコミュニティ交通がその役割を果たしています。

運行にかかる費用は、運賃収入だけで全てを賄うことが難しい場合、市と地域が協力して負担する仕組みとなっています。具体的には、運行経費全体の3分の2を市が負担し、残りの3分の1は運賃収入、広告収入、そして地域住民や企業からの協賛金（地元負担）によって賄われます。この方式により、持続可能な地域内交通サービスの提供が図られています。

沿革：地域ニーズに応じた展開

富士市におけるコミュニティ交通の歴史は、1999年10月1日に現在の「ひまわりバス」の前身である「ひまわり」が運行を開始したことに始まります。その後、2007年には「しおかぜ」、2008年には「ナイトシャトル」「みなバス」「こうめ」が登場するなど、地域からの要望や公共交通の状況変化に合わせて路線の拡充が進められてきました。実証運行を経て本格運行に移行するケースも多く見られ、「おかバス」が「おかタク」に移行したり、「Cバス」が運行を終了するなど、常に最適な交通手段のあり方が模索されてきました。近年では、新たなデマンドタクシー路線の開設が相次いでおり、よりきめ細やかなサービス提供へとシフトする傾向が見られます。

現在運行中の路線

富士市では、主に固定ルートを巡回するコミュニティバスと、予約に応じて運行ルートや時間が調整されるデマンドタクシーの二つの形態でサービスを提供しています。

コミュニティバス

ひまわりバス（富士ひまわり線）
市が富士急静岡バスに運行を委託。吉原中央駅と富士駅を起点とする二つの循環ルートがあり、吉原地区や富士地区の市役所、駅、商業施設、学校、図書館などを結んでいます。月曜日から土曜日まで運行しており、運賃は一律200円です。地域住民のデザインによる専用車両が使われています。
まちなか循環バス「ぐるっとふじ」
市が富士急静岡バスに運行を委託。そのうち夜間帯に運行されるルート（S213・S214）がコミュニティバスとして位置づけられています。吉原中央駅、富士市役所、富士中央病院、富士駅、新富士駅などを経由し、中心市街地における夜間の移動をサポートします。2017年11月6日に運行を開始しました。
田子浦地区コミュニティバス「しおかぜ」
市が石川タクシー富士に運行を委託。路線バス廃止後の代替として導入されました。JR富士駅とJR新富士駅を結び、新富士駅を起点に田子浦地区内を循環。まちづくりセンター、学校、スーパー、病院などが主な経由地です。月曜日から土曜日まで運行し、運賃は200円です。
富士南地区コミュニティバス「みなバス」
市が石川タクシー富士に運行を委託。公共交通空白地域だった富士南地区の移動手段として運行を開始しました。JR富士駅を起点に富士南地区を巡り、新富士駅へ向かいます。まちづくりセンター、学校、スーパー、病院などを経由します。月曜日から土曜日まで運行、運賃は200円です。
岩松北地区コミュニティバス「こうめ」
市が石川タクシー富士に運行を委託。路線バス（岩本山団地線）廃止後の代替です。JR富士駅と岩本山公園を結びますが、朝夕と昼間では経由ルートが異なります（オレンジコース、グリーンコース）。月曜日から土曜日まで運行し、運賃は300円です。地域住民で構成される協議会が運行を支援しています。
吉原・富士駅北地区コミュニティバス「うるおい」
市が石川タクシー富士に運行を委託。吉原中央駅とJR富士駅間の連携強化と公共交通空白地域の解消を目指して導入されました。朝夕は駅間を直線的に結ぶ直行ルート、昼間は地域内をきめ細かく巡回するルートで運行されます。公会堂、学校、スーパー、病院などを経由します。月曜日から土曜日まで運行、運賃は200円です。
モーニングシャトル
市が石川タクシー富士に運行を委託。早朝に吉原中央駅から新富士駅を経由して富士駅へ向かう便が1本のみ運行されます。月曜日から土曜日運行、運賃は200円です。
吉永北地区コミュニティバス「なのはな」
市が石川タクシー富士に運行を委託。平日朝に2便のみ運行される路線バス形態です。桑崎を出発し、陽光台などを経由して富士東高校へ向かいます。運賃は250円。平日のみの運行で、祝日や特定期間は運休します。日中時間帯は同名のデマンドタクシーが運行されます。
富士市自主運行バスふじかぐやの湯線
市が富士急静岡バスに運行を委託。吉原中央駅とふじかぐやの湯を結び、駿河台や富士総合運動公園などを経由します。PASMOなどの交通系ICカードでの支払いが可能です。ふじかぐやの湯が休館の日は新東名北発着となります。一部の便を除き毎日運行しています。

デマンドタクシー

デマンドタクシーは、主に公共交通が不便な地域において、利用者からの予約を受けて運行される乗合タクシー形式のサービスです。原則として事前に市の会員登録が必要です。

神戸地区デマンド型乗合タクシー「やまぼうし」
市が石川タクシー富士に運行を委託。自宅と指定された停車場間、または停車場同士を結びます。神戸地区と今宮地区の住民が利用可能で、地区によって運賃が異なります（350円または450円）。毎日運行です。
大淵富士本地区デマンドタクシー「こぶし」
市が富士交通に運行を委託。路線バス（富士本循環線）廃止後の代替として導入されました。富士本地区の自宅と中野周辺の指定停車場を結ぶ区域運行です。運賃は500円。毎日運行です。
原田地区デマンドタクシー「ほたる」
市がシンフジハイヤーに運行を委託。公共交通空白地域の解消を目的としています。原田地区の自宅と、まちづくりセンター、病院、スーパー、駅・バス停（岳南電車や路線バスへの乗り換え拠点）などの指定停車場を結びます。運賃は200円。毎日運行です。
吉永地区デマンドタクシー「かぐや」
市がシンフジハイヤーに運行を委託。こちらも公共交通空白地域の解消を目指します。吉永地区の自宅と、まちづくりセンター、病院、スーパー、駅・バス停（岳南電車や路線バスへの乗り換え拠点）などの指定停車場を結びます。運賃は200円。毎日運行です。
丘地区デマンドタクシー「おかタク」
市が鷹岡タクシーに運行を委託。「おかバス」からの移行により、2011年11月1日に運行を開始しました。自宅と停車場間、または停車場同士を結びます。運賃は300円。他のデマンドタクシーと異なり、富士市民であれば誰でも利用登録・乗車が可能です。毎日運行です。
天間地区デマンドタクシー「てんまーる」
市が鷹岡タクシーに運行を委託。自宅と停車場間、または停車場同士を結びます。運賃は400円。毎日運行です。
元吉原地区デマンドタクシー「マリン」
市がトンボ交通に運行を委託。公共交通空白地域の解消を目指し、2013年に実証運行開始、2015年に本格運行へ移行しました。自宅と、駅、バス停、まちづくりセンター、病院、スーパーなどの指定停車場を結び、他の公共交通への乗り換えも可能です。運賃は300円から。毎日運行です。
吉永北地区デマンドタクシー「なのはな」
市が石川タクシー富士に運行を委託。日中時間帯に運行されるデマンド形式です。自宅と、駅、バス停、まちづくりセンター、病院、スーパーなどの指定停車場を結び、富士見台団地で路線バスへの乗り換えが可能です。利用者の居住地区（間門町、桑崎町など）によって運賃体系が異なります（500円または1,000円）。事前登録が必要です。平日朝はコミュニティバス「なのはな」が運行されています。
松野地区デマンドタクシー「おぐるま」
市が岳南タクシーに運行を委託。2019年に実証運行を開始し、2021年に本格運行へ移行しました。松野地区の住民のみ利用可能（事前登録必要）で、地区内の利用は300円（小学生半額、未就学児無料）です。運行時間帯によって便数が異なります（日中は30分間隔）。山梨交通の路線バスとの乗り継ぎ割引があります。回数券も販売されています。
富士川地区デマンドタクシー「ふじかわ」
市が岳南タクシーに運行を委託。2022年10月1日に実証運行を開始しました（2年間の予定）。富士川地区（かぎあな区を除く）をカバーし、自宅と指定停車場を結びます。一部、岩松地区にも停車場があります。富士川地区の住民のみ利用可能（事前登録必要）で、地区内利用は400円、地区外利用は500円（小学生半額、未就学児無料）です。運行時間帯によって便数が異なります（日中は30分間隔）。山梨交通の路線バスとの乗り継ぎ割引があります。回数券も販売されています。

過去の路線・実験運行

富士市では、地域ニーズの変化や効果測定のために、いくつかの路線で実験運行や本格運行後の終了・移行が行われています。

伝法地区おでかけバス: 2020年10月7日から2023年9月27日まで実証運行。伝法地区内の停留所とクロスガーデンを結んでいましたが、利用増に至らず本格運行には移行しませんでした。当初の定路線から区域運行へ変更や、ボランティアガイドの添乗も試みられました。
東田子アクセスバス: JR東田子の浦駅へのバス需要把握のため、複数回実験運行が実施されました。
東田子の浦駅 - 岳南江尾駅シャトルバス: JRと岳南電車の連携促進のため実験運行（2012年）。乗り継ぎ割引や無料となる特典がありました。
「ふじ丸」: 吉原中央駅、富士駅、新富士駅、吉原本町駅を結ぶ試験運行バス（2006年-2007年）。
丘地区コミュニティバス「おかバス」: 路線バス空白地域だった丘地区の移動手段として実証運行（2009年-2011年）。デマンドタクシー「おかタク」へ移行しました。
Cバス: 旧富士市と旧富士川町の合併後のアクセス強化のため運行（2009年-2014年）。高速道路を経由する特徴的な路線でした。
ナイトシャトル: 「ふじ丸」終了後、夜間移動の需要に応えるため運行されました。

富士市のコミュニティバス・デマンドタクシーは、地域の実情に合わせた多様な形態で運行されており、市民の日常生活や公共交通ネットワークの維持・充実に貢献しています。

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