富士身延鉄道210形電気機関車

富士身延鉄道210形電気機関車

富士身延鉄道210形電気機関車は、1928年（昭和3年）に富士身延鉄道（現在のJR東海身延線）が導入した直流用電気機関車です。3両が製造され、形式は210 - 212でした。富士身延鉄道の国有化に伴い、国鉄籍へ編入され、ED21形（ED21 1 - 3）と改称されました。

概要

210形は、前年に製造された200形電気機関車に続き、日立製作所で製造されました。車体は箱型で、軸配置はB-Bの中型機です。基本構造は、1926年（大正15年）に鉄道省に納入されたED15形をベースにしています。同時期には、日立製作所が国鉄ED15形を基本とする私鉄向けD形電気機関車として、長野電鉄500形や南武鉄道1001形（後の国鉄ED34形→ED27形2代）も製造しており、これらの車両はリベット組み立ての無骨な車体設計が共通しています。

しかし、台車構造には違いがありました。国鉄ED15形や長野電鉄500形が重ね板ばねによるペデスタル式板台枠台車を採用しているのに対し、本形式と南武1001形は鍛造の巨大な釣合梁を持つイコライザー式台車を採用しました。このイコライザー式台車は、走行時の安定性を向上させるためのものでした。

前面は貫通構造で、貫通扉のすぐ左に点検用の梯子が取り付けられています。側面には、運転士側と助士席側の両方に乗務員扉が設けられていました。

導入後の変遷

1941年（昭和16年）5月1日、富士身延鉄道が国有化され、本形式も鉄道省（国有鉄道）に編入されました。それに伴い、ED21形と改称されました。当初は富士身延鉄道時代の仕様のまま運用されましたが、1951年（昭和26年）に機器の標準化が行なわれ、発電ブレーキが撤去されました。これは、同時期に運用されていたED20形と同様の措置です。

太平洋戦争後の1953年（昭和28年）には、全機が飯田線に転属しました。その後、ED21 3は大糸線へ転属しています。1955年（昭和30年）4月から6月にかけては、ED21 2が三岐鉄道に貸し出され、黒部ダム建設の資材輸送（通称：黒四輸送）に貢献しました。この時の活躍は、本形式の歴史の中でも特筆すべき出来事です。

ED21 1は、1959年（昭和34年）に廃車となりました。残る2両は、老朽化が著しくなり、阪和線から大糸線に戻ってきた同クラスの寸法・自重のED60形（2, 3）と置き換えられる形で、1973年（昭和48年）に中部天竜機関支区所属のED21 2と北松本機関区所属のED21 3がそれぞれ廃車となりました。全機、廃車後に私鉄へ払い下げられることなく、解体処分されています。

富士身延鉄道210形電気機関車は、その短い生涯の中で、富士身延鉄道、国鉄、そして黒部ダム建設という複数の場所で活躍しました。その独特な構造と歴史は、日本の鉄道史において重要な位置を占めています。

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