富山丸

富山丸（とやままる）

富山丸は、日本郵船が1915年に竣工させた貨物船であり、当時のT型貨物船の一隻として7500総トン級を誇りました。その歴史は、第一次世界大戦の真っ只中から始まり、艦は連合国向けの軍需品や食料を輸送する重要な役割を果たしました。しかし、戦争の激化とともに、富山丸はそれ以降も様々な運命に翻弄されることとなります。

船歴の概要

富山丸は、1912年から1913年にかけてイギリスから購入した中古船の運用実績をもとに、日本郵船が新たに建造した6隻の貨物船の一つです。これらの船はすべて「T」で始まる名前を持ち、T型貨物船と呼ばれるようになりました。特に富山丸は、1915年に完成後、シアトルやボンベイ航路に就航し、成功を収めました。

1935年には南洋海運に一時的に出資されたものの、その後日本郵船に戻り、戦時中は陸軍徴傭船として増援部隊の輸送に従事しました。この時期、富山丸は膨大な数の兵士や物資を運ぶ重要な役割を担いました。

沈没の経緯

1944年6月27日、富山丸は他の11隻とともにカタ412船団を構成し、鹿児島湾を出港しました。沖縄への増援が急務となる中、独立混成第44旅団の将兵と装備を搭載していたのです。翌日、船団は沖縄に向かって出発しますが、その航路でアメリカの潜水艦「スタージョン」と遭遇しました。

朝5時29分、「スタージョン」は富山丸を含む船団を発見し、航行を続ける中で艦首発射管から魚雷を発射。4本のうち3本が富山丸に命中し、火災が発生し、船体は二つに折れて沈没しました。この惨事は、両旅団の兵士を含む多くの命を奪い、約3,600名の戦死者を出すという悲劇につながりました。

死亡者数とその影響

この事件は、日本海軍や陸軍の記録においては重大な事故として秘匿されましたが、結果として「富山丸」は多くの戦死者を出した艦船の一つとなりました。沖縄戦の終息を急ぐ中で、陸軍徴傭船としての役割を持っていた富山丸の損失は、残った兵士たちの戦闘能力にも大きな影響を与えました。

また、この事故による損害は、当時の日本政府の戦局を維持する上でも重大な痛手となり、航空戦力の強化に遅れをもたらしました。興味深いことに、富山丸の沈没については、1964年に慰霊塔が建立されるなど、その後も語り継がれる事例となっています。

まとめ

富山丸の歴史は、貨物船としての役割を果たす一方で、沖縄戦における惨劇を象徴する存在となっています。彼女の航海とそこでの犠牲者たちの思いは、今もなお私たちに戦争の悲惨さを教えてくれる重要な教訓となっています。

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