富山市立奥田中学校いじめ自殺事件

富山市立奥田中学校いじめ自殺事件

1988年12月21日、富山県富山市で、当時中学1年生だった女子生徒A（当時13歳）がいじめを苦に自宅アパートから飛び降り自殺するという痛ましい事件が発生しました。Aは、遺書に加害者の実名を列挙し、「もう誰もいじめないで…」という悲痛なメッセージを残しました。

事件の経緯

Aは、免疫症候群IgA欠損症という病気を抱え、入退院を繰り返すなど、病弱な少女でした。中学校入学後、Aはクラスの中で孤立し、複数の生徒から無視や悪口などのいじめを受けるようになります。Aは担任教諭に相談するも、学校側の対応は十分とは言えず、いじめはエスカレートしていきました。

事件の背景には、当時の奥田中学校が抱える問題がありました。生徒数が1300人を超えるマンモス校であり、受験競争が激しい一方で、校内暴力も頻発していました。厳しい校則が存在する一方で、不登校児童の発生率も高いという、矛盾した状況が存在していました。

いじめの内容

Aは、同級生から仲間外れにされたり、悪口を言われたりするだけでなく、牛乳パックに落書きをされたり、「ゲロ」「でぶ」などと書かれたメモを投げつけられるなどの陰湿ないじめを受けていました。

担任教諭への相談と学校の対応

Aは、担任教諭に何度もいじめの相談をしましたが、担任は「いじめられている生徒同士で仲良くするように」と促すなど、十分な対応をしませんでした。また、Aが転倒して怪我をした際にも、学校側は加害生徒を特定せず、謝罪させることもありませんでした。

友人との絶交

Aは、親しかった友人Cと些細なことから喧嘩し、絶交してしまいます。このことがAの孤立をさらに深め、いじめはより一層激化しました。友人Bからも絶交状を送りつけられ、精神的に追い詰められました。

自殺

1988年12月21日未明、Aは自宅アパートから飛び降り自殺しました。遺書には、いじめに対する苦しみや絶望、そしていじめをなくしてほしいという願いが綴られていました。

事件後の両親の活動

Aの両親、岩脇克己と壽恵は、Aの死後、真相究明と責任追及のために奔走しました。同級生らの大学進学後、情報公開請求などの活動を開始し、富山市に対し損害賠償請求訴訟を起こしましたが、一審・二審共に棄却されました。

支援団体の発足と書籍の出版

両親の活動を支援するため、「『もう、ひとりにはさせないよ！』の会」が設立され、事件を題材としたルポルタージュ、手記、児童書など、複数の書籍が出版されました。

学校側の対応への批判

両親は、学校側の対応に強い不信感を抱いていました。学校側は、事件の真相を隠蔽しようとし、いじめの事実を認めようとしませんでした。また、両親に対する嫌がらせも相次ぎました。

裁判

両親は、富山市を相手に損害賠償請求訴訟を起こしましたが、裁判所は学校側の責任を認めませんでした。判決は、両親にとって納得のいくものではありませんでした。

記憶の継承

克己は、Aの自殺から1年後の1989年に講演会に参加し、事件について語りました。その後も、いじめ問題に関する集会やシンポジウムに積極的に参加し、Aの死を無駄にしないために活動を続けました。

2019年に克己が死去した後も、支援者たちはAの記憶を継承し、いじめのない社会の実現を目指して活動を続けています。

教訓

富山市立奥田中学校いじめ自殺事件は、いじめ問題の深刻さと、学校側の対応の重要性を示唆するものでした。この事件を教訓に、いじめのない社会を築くために、私たち一人ひとりが真剣に向き合わなければなりません。

この事件は、いじめ問題の根深さと、被害者家族の苦しみ、そしていじめ防止のために社会全体で取り組む必要性を改めて私たちに教えてくれます。

注釈: 見出しに自殺した女子児童の実名が含まれる箇所は、「A」に置き換えています。

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