富山県立中央農業高等学校

富山県立中央農業高等学校（とやまけんりつちゅうおうのうぎょうこうとうがっこう）は、富山県富山市東福沢に位置する公立の農業系高等学校です。通称は「中農（ちゅうのう）」。広大な敷地と充実した実習施設を備え、地域農業の振興と将来の担い手育成を目指した教育を行っています。

設置学科

本校には、農業の専門分野を深く学ぶための多様な学科が設置されています。

生物生産科
農産物や畜産物の生産技術を学ぶ学科です。2年次からは、作物の栽培技術や科学を追究する「作物科学コース」、畜産動物の飼育・管理・利用を学ぶ「動物科学コース」に分かれ、より専門的な知識・技術を習得します。
園芸デザイン科
植物を利用した環境デザインや福祉分野への応用を学ぶ学科です。2年次からは、植物を通じた癒しや福祉を学ぶ「園芸福祉コース」、緑地の計画・施工・管理や環境保全を学ぶ「環境緑化コース」に分かれます。
バイオ技術科
生物の力を活用した技術や食品加工について学ぶ学科です。2年次からは、遺伝子技術や細胞培養など生命科学を探究する「生物工学コース」、農産物を加工する技術や食品の製造・流通を学ぶ「食品加工コース」に分かれます。

また、高等学校卒業後にさらに高度な農業技術や経営を学ぶための農業特別専攻科が設置されています。修業年限は2年間で、農業経営のスペシャリストを目指す「担い手育成コース」と、造園・庭園技術を専門的に学ぶ「庭園コース」があります。

特色ある活動と研究

本校では、実践的な学びとともに、先進的な研究や地域に貢献する活動にも力を入れています。

米ぬか除草剤研究
環境に配慮した農業技術として、米ぬかを利用した除草効果に関する研究を長年行っています。1998年に予備試験を開始し、2000年には企業との共同開発により米ぬかのペレット化に成功。2003年には米ぬか錠剤化の特許を取得するなど、成果を上げています。また、2004年からはタイの大学との国際共同研究も実施しています。
棚田を守り隊
高齢化が進む地域の棚田保全のため、「棚田を守り隊」として活動しています。毎年夏には希望者（主に生物生産科の生徒）が急斜面の棚田のあぜの除草作業を行います。これは、害虫発生や品質低下を防ぎ、棚田の放棄を防ぐとともに、美しい景観と地域環境を守ることを目的として、2001年から継続されている活動です。
BDF燃料の活用
環境負荷低減の取り組みとして、2006年からは校内で使用した食用油を原料とするBDF（バイオディーゼル燃料）を製造し、トラクターや校内バスの燃料として活用しています。

広大な敷地と充実した実習環境

本校の校地面積は約36ヘクタールにも及び、各学科の専門的な学びを深めるための多様な実習施設が整備されています。

生物生産科関連：広大な水田（約4.8ha）、露地やハウスでの野菜栽培施設、肉牛舎、堆肥舎、小動物棟、牧野など。
園芸デザイン科関連：温室、ハウス、草花園、庭木園、造園施工実習室、見本園など。
* バイオ技術科関連：生物工学分野の実験が可能なバイオ棟（培養室、クリーンルーム等）、植物の順化・育成を行う温室やハウスなど。

また、創立時から不定期に植樹が行われてきたサクラに関して、2001年には当時の園芸造園専攻の生徒が中心となり、学校を地域の憩いの場とするための「サクラ1000本計画」を立ち上げました。以来、毎年新たな植樹と管理・調査が続けられており、現在ではサクラを題材とした授業も行われ、生徒は樹木に関する知識や造園技術を学んでいます。

寮生活

全校生徒の約8割が校内にある寄宿舎「豊心寮」で生活しています。共同生活を通じて、自立心や協調性を育んでいます。

沿革の概要

現在の学校敷地は、昭和初期までは痩せた山地でしたが、1930年頃から開拓が始まりました。学校の歴史は、1958年に富山市で開校した定時制の富山県立富山通信産業高等学校（農業課程）に始まります。翌年には大山町東福沢に別科が設置され、現在の場所での教育が始まりました。その後、校名変更や学科・制度の改編を経て、1969年に自営者養成農業高校の指定を受けて全日制に転換し、「富山県立中央農業高等学校」と改称しました。この年には昭和天皇・香淳皇后の行幸啓を賜っています。1972年には専攻科を設置。2003年には学科改編が行われ、現在の生物生産科、園芸デザイン科、バイオ技術科体制となりました。その後も、施設設備の増改築や耐震工事、ICTを活用した新たな実習施設（とやま農業未来カレッジICT活用環境制御型園芸ハウス）の設置など、教育環境の整備が進められています。

その他

運動部ではゴルフ部、卓球部、野球部など、文化部では茶道部、吹奏楽部などが活動しています。また、カナダのカムローズ・コンポジット高等学校と姉妹校提携を結んでおり、国際交流も行っています。

本校は、緑豊かな環境の中で、実践的な農業教育と人間教育を通じて、地域社会に貢献できる人材を育成し続けています。

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