富本憲吉

富本憲吉について

富本憲吉（とみもと けんきち、1886年6月5日 - 1963年6月8日）は、日本を代表する陶芸家として知られています。彼は人間国宝や文化勲章を受章し、その作品は日本の陶芸界において重要な位置を占めています。長男は映画監督・テレビ演出者の富本壮吉であり、妻は著名な文人・尾竹紅吉です。

幼少期と学び

奈良県生駒郡安堵町に生まれた富本は、裕福な家庭で育ち、幼い頃から絵を学ぶ環境にありました。東京美術学校に進学し、建築や室内装飾を学びます。在学中にウィリアム・モリスの影響を受け、1908年にはロンドンへ留学。ヴィクトリア&アルバート美術館に通い、アーツ・アンド・クラフツの作品から多くのインスピレーションを得ました。帰国後は清水組に入社しますが、職場を退職し新たな道を模索します。

陶芸との出会い

陶芸家のバーナード・リーチとの出会いが、富本の陶芸に対する興味を引き出します。彼は1913年に故郷に簡易的な窯を作り、楽焼を始めることになりました。1914年には尾竹紅吉と結婚し、家族を築く一方で、自らの陶芸の技術をだけでなく、独自のスタイルを確立するために多くの作品を生み出していきます。

大和時代と東京時代

大正時代中期には、奈良に築いた本格的な窯での制作を重ね、白磁の焼成に成功します。この時期を「大和時代」と呼び、彼の独自の美意識と技術が深まった時代とされています。その後、1926年には東京に移り、世田谷に新しい窯を構えます。この時期からは主に白磁や染付の作品を手がけ、1927年の特別展で評判を得ることができました。

重要無形文化財としての認定

1935年には帝国美術院に選ばれ、1944年には東京美術学校の教授に就任します。第二次世界大戦中の疎開を経て、戦後には京都へ移り、新たな陶芸の道を歩むことになります。特に金銀彩の技法を完成させ、独自の作陶様式を確立するなど、彼の作風はさらに深化していきます。1955年には重要無形文化財「色絵磁器」保持者として人間国宝に認定され、同時に文化勲章を受賞します。

晩年と影響

富本は最晩年においても創作活動を継続し、自らの作品を通じて日本の陶芸文化に多大な影響を与えました。1961年には文化勲章を受章し、1963年に77歳で逝去するまで、彼の陶芸は多くの人々に愛され、尊敬され続けました。

著書と展覧会

富本憲吉は、陶芸に関する複数の著書を持つほか、彼の作品を紹介する展覧会も多く開催されました。彼の作品は今もなお多くの人々に感銘を与え続け、奈良県生駒郡安堵町の旧自宅跡もかつては記念館となっていましたが、現在はレストランとホテルに改装されています。

富本憲吉の生涯とその作品は、今や日本の文化資産として受け継がれており、その影響は次世代の陶芸家たちへと波及し続けています。

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