富永惣一

富永惣一：日本の美術史に多大な貢献を果たした巨匠

富永惣一(1902年9月18日-1980年6月4日)は、20世紀日本の美術史研究において重要な役割を果たした美術史家、美術評論家です。華麗なる一族の出身であり、その経歴は学究の道のみならず、国立西洋美術館初代館長といった要職への就任や、美術界における数々の論争への関与など、波乱に満ちたものでした。

名門の出自と学究への道

東京生まれの富永は、男爵・安場末喜の孫にあたる家系に育ちました。学習院高等科を経て、東京帝国大学文学部に入学。当初はフランス文学を専攻しましたが、後に美学美術史学科へ転科、1926年に卒業しました。その後、学習院の講師、教授として教鞭を執りながら、研究を深めていきます。1931年から1933年にかけては、宮内省在外研究員として欧米に留学し、西洋美術を深く研究する機会を得ました。

学習院大学教授、国立西洋美術館初代館長

1949年には学習院大学文学部教授に就任。同大学で後進の育成に尽力しました。美術評論家としても活躍し、1954年には美術評論家連盟会長に選出されるなど、美術界における存在感を高めました。1959年には、国立西洋美術館の初代館長に就任。この時代の日本の美術界を代表する人物の一人として、日本の西洋美術研究、鑑賞の普及に大きく貢献しました。しかし、1968年に購入作品の真贋問題が大きな社会問題となり、その責任をとって館長を辞任せざるを得ませんでした。

多岐にわたる著作活動

富永惣一の学問的貢献は、膨大な著作活動にも見ることができます。セザンヌ、ロダン、ピカソなど、近代西洋美術の巨匠に関する研究書から、古代ギリシア彫刻に関する専門書、日本の美術に関する一般向け解説書まで、その著作は多岐に渡ります。また、『西洋美術文庫』や『図説世界文化史大系』といった編纂にも携わり、日本の美術研究の進歩に貢献しました。さらに、西洋美術史の古典的な文献の翻訳にも取り組み、日本の美術研究に新たな視点を提供しています。

受賞歴と晩年

富永は、その業績に対し、1969年にシュヴァリエ・ド・ラ・レジォン・ドヌール勲章、1974年には勲二等瑞宝章を受章しました。国立西洋美術館館長辞任後は、大阪万国博覧会美術館館長、共立女子大学教授などを歴任。1973年に定年退任後も、美術史研究への関わりは絶えることなく、日本の美術界の発展に貢献し続けました。

まとめ

富永惣一は、名門の出身でありながら、学究の道を志し、日本の美術史研究に大きな足跡を残しました。国立西洋美術館初代館長としての活動や、多岐にわたる著作、そして真贋問題への関与など、その生涯は、激動の時代における美術史家の複雑な役割を如実に示しています。彼の業績は、今日の日本の美術界に多大な影響を与え続けており、今後も美術史研究において重要な存在であり続けるでしょう。彼の波乱に満ちた人生と、日本の美術史に与えた貢献は、多くの後世の美術研究者たちに深い感銘を与え続けているのです。

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