富澤宏哉

富澤宏哉: プロ野球審判員の先駆者

富澤宏哉（とみざわ ひろや、1931年7月25日生まれ）は、日本のプロ野球における審判員として数多くの試合を裁き、優れた実績を残した人物です。東京都出身で、東京都立小金井工業高等学校を卒業後、社会人野球の審判を経て、1955年にセ・リーグ審判部に入局しました。彼の通算出場試合数は3775試合に及び、1980年から1989年には審判部長を務め、1990年に引退しました。

審判員としてのキャリア

富澤は、セ・リーグ審判袖番号10を背負い、1988年から1990年までその番号を使用しました。彼は、9回のオールスターゲームや日本シリーズにも出場し、その実績は当時の日本記録保持者でした。特に注目される出来事として、1977年9月3日の読売ジャイアンツ対ヤクルトスワローズ戦で、王貞治が通算756本目の本塁打を達成した際の審判を務めたことがあります。この試合は彼の名を歴史に刻む瞬間となりました。

日本シリーズにおける名場面

富澤は、1960年時点で29歳という若さで日本シリーズに出場した唯一の審判員としても知られています。また、1959年には天覧試合、巨人対阪神戦の審判も務めました。これは日本の野球史の中でも特別な出来事として、彼のキャリアの中でのハイライトとなりました。ただし、富澤は選手としての経験がほとんどなく、特に優れた野球の技術を持っているわけではありませんでした。このため、捕手に直接ボールを手渡す方法を取っていたことから、当時「プロ野球審判員第1号」として注目されました。

知識の向上への努力

大学での野球の経験がほとんどないにもかかわらず、富澤は1972年に自費で米国のアル・ソマーズ審判学校に留学し、留学生としての第一号となりました。この経験は、彼の審判技術を向上させる要因の一つとなりました。彼の取り組みは、今日の審判員にとっても重要な模範となっています。また、引退の前年には新たなインサイドプロテクターを取り入れてプレイスタイルを適応させるなど、審判としての意識の高さも伺えます。

グラウンド外での人間性

富澤は、試合だけでなく、実生活でも人間性が評価され、1980年には名古屋で焼身自殺を図った男性を救助したことで、中村署からの表彰を受けたエピソードがあります。この行動は、彼の審判としての姿勢だけでなく、一人の人間としての温かさを表しています。

日本シリーズ中断事件

1978年には、日本シリーズ・ヤクルト対阪急第7戦での判定により、試合が1時間19分中断した出来事がありました。ヤクルトの大杉勝男選手が打った打球の判定を巡って、阪急の上田監督が猛抗議し、一時的に試合がストップ。最終的には、コミッショナーの納得を得て試合が再開されました。この出来事は、富澤の審判キャリアの中でも特に記憶に残る瞬間となりました。

富澤宏哉は、プロ野球界においてユニークな経歴を持つ審判員であり、その情熱と努力は今後も語り継がれることでしょう。

もう一度検索