寺本五郎

寺本 五郎

寺本 五郎（てらもと ごろう、1910年7月23日生 - 1988年5月4日没）は、昭和期の日本において重要な役割を果たした銀行家の一人です。旧姓は牧野といい、不動貯金銀行の頭取を務めたほか、日満中央協会の顧問としても活動しました。

出自・家族と養子縁組

彼の出自は、当時の金融界において大きな影響力を持っていた牧野家です。父は、自身も不動貯金銀行の頭取であった牧野元次郎。五郎は、その牧野元次郎の四男、あるいは六男として生まれました。しかし、彼は実家を離れ、寺本商店の代表社員であった寺本圭助の家に養子として迎えられます。この養子縁組は、圭助の長女である柳子との結婚によるものでした。養父の寺本圭助が経営していた寺本商店は、東京の南葛飾郡亀戸町を拠点とする合資会社で、主にセルロイド製品、特に玩具や雑貨の製造を手掛けていましたが、後に東京セルロイド、さらに大日本セルロイドへと事業統合されていきました。養母そのは、東京の柴田柳三郎の次女でした。

彼の家族構成を見ると、妻柳子（九段精華女学校卒）との間に二人の子供をもうけています。
長女：元子（1932年生）
長男：圭一（1933年生、カントリー・ミュージシャン）

実家である牧野家には、父牧野元次郎の他にも、兄の牧野太郎が不動貯金銀行の常務取締役を務めており、牧野家が不動貯金銀行において中心的な役割を担っていたことが改めてわかります。

銀行家としての歩み

寺本五郎のキャリアは、実家と深い繋がりを持つ不動貯金銀行で始まりました。彼はまず頭取秘書として入行し、銀行業務の基礎を学びます。特に、貯蓄銀行の運営に関する知見を深めるため、欧州各国への出張を経験しました。帰国後、その見聞を活かして銀行業務に貢献。1935年には取締役に就任し、経営の中枢に加わります。その後も順調に昇進を重ね、1938年には常務取締役、翌1939年には副頭取へと就任しました。そして、1941年にはついに、父と同じ不動貯金銀行の頭取に就任します。これは、彼が実力と実績を兼ね備えていたことを示すだけでなく、牧野家と寺本家という二つの家系が金融界、特に不動貯金銀行と深く結びついていたことを物語る出来事でもあります。

戦後とその他の活動

第二次世界大戦後、金融業界の再編が進む中で、寺本五郎が頭取を務めていた不動貯金銀行は、他の貯蓄銀行と共に協和銀行として合併・再出発することになります。戦後の新しい金融体制のもと、寺本五郎は直接協和銀行の経営には携わらなかったようですが、その後、日本相互銀行の取締役を務めるなど、引き続き日本の金融界においてその経験と識見を活かしました。

銀行家としての多忙な日々の傍ら、寺本五郎は様々な趣味にも興じていました。特にゴルフと茶道を愛好し、これらの趣味を通じて文化的な素養も深めていたことがうかがえます。彼の居住地は東京市麻布区仲ノ町（現在の東京都港区六本木）であり、当時の東京の主要部に居を構えていたことがわかります。

まとめ

寺本五郎は、激動の昭和期において、不動貯金銀行の経営トップとして日本の貯蓄銀行業界を牽引しました。実家と養家の背景を持ちながら、自らの手腕で銀行家としてのキャリアを確立し、趣味にも造詣が深い人物として、当時の財界や社交界において存在感を示したと言えるでしょう。

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