寺田財閥

寺田財閥

寺田財閥は、明治時代から昭和時代にかけて大阪府泉州地域、特に岸和田市を中心に発展した阪神財閥の一つです。そのルーツは、文化年間に岸和田で酒造業を始めた寺田家に遡ります。銘柄『玉の井』で知られる酒造業を基盤に、銀行、紡績、製綱業など多角的な事業展開を行い、地域経済に大きな影響を与えました。

財閥の形成

酒造業を営んでいた寺田家は、三代目甚兵衛の死後、妻の徳が後を継ぎ、入夫を迎えて家業を支えました。その後、甚兵衛の息子である甚与茂と元吉が中心となり、明治時代に入ると、岸和田地域の企業設立に積極的に関与するようになります。第五十一国立銀行（後の和泉銀行）、岸和田煉瓦綿業、岸和田紡績といった企業に共同出資し、役員に就任することで、財閥としての基盤を築き上げました。

寺田財閥は、南寺田家（甚与茂系）、北寺田家（元吉系）、堺寺田家（利吉系）の三つのグループによって構成されていました。南寺田家が圧倒的な力を持っていましたが、各家がそれぞれの事業を展開し、相互に連携することで、財閥全体の力を高めていきました。

各家の事業展開

南寺田家

南寺田家は、和泉銀行、岸和田紡績、岸和田煉瓦綿業などを中心に事業を展開しました。甚与茂はこれらの会社の社長や頭取を歴任し、グループを率いました。しかし、戦時統制経済の進展とともに、和泉銀行は阪南銀行を経て住友銀行に合併され、岸和田紡績も大日本紡績（後のユニチカ）に吸収合併されるなど、その勢力は徐々に衰退していきました。戦後は、ユニチカやオーツタイヤ（現・住友ゴム工業）などの大企業の株主として名を連ねるなど、資産家としての活動が中心となりました。

北寺田家

北寺田家は、五十一銀行を足がかりに、関西製綱、東洋麻糸紡織、泉州織物などを設立し、独自のグループを形成しました。元吉とその息子である元之助がこれらの企業の経営を主導し、佐野紡績（後の帝国産業、現在のテザック）を家業会社として発展させました。帝国産業は一時経営破綻しましたが、その後再建を果たし、現在も事業を継続しています。

堺寺田家

堺寺田家は、二代利吉の時代に寺田銀行、寺田紡績工廠（後の寺田工業、現在のテラボウ）を設立し、独自の事業を展開しました。寺田工業は麻綿混紡糸メーカーとして現在もテラボウとして存続していますが、ユニチカの完全子会社となっており、堺寺田家との直接的な関係は薄れています。

寺田財閥の特徴

寺田財閥は、他の財閥と比較して、創業家一族が経営の中枢を担い続けた点が特徴的です。専門経営者も存在しましたが、重要な意思決定は寺田家のメンバーによって行われていました。また、地域経済への貢献を重視し、地元企業の育成や地域社会の発展に尽力しました。

しかし、戦後の財閥解体や経済状況の変化により、寺田財閥は徐々にその勢力を失っていきました。現在では、各家がそれぞれの事業を継続していますが、かつての財閥としての影響力は大きく低下しています。

関連施設

がんこ岸和田五風荘
岸和田市立自泉会館

寺田財閥は、阪神地域における経済発展の一翼を担った重要な存在であり、その歴史は、日本の近代経済史を語る上で欠かすことのできないものです。

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