封入体

封入体とは

「封入体（ふうにゅうたい、英: inclusion body）」は、細胞内部（細胞質や核）に観察される、異常な物質が集まってできた機能を持たない微細な構造物です。多くの場合、顕微鏡で見ると周囲とは異なる染色性を示す領域として識別できます。

封入体が形成される原因

封入体の形成は多様な要因によって引き起こされます。主な原因としては、特定のウイルスやクラミジアによる細胞感染が挙げられます。病原体自身やそれに関連する物質が細胞内に異常に蓄積することで封入体が形成されます。また、特定の重金属への曝露による中毒や、細胞の代謝異常、傷害に伴う老廃物の蓄積なども原因となり得ます。

封入体の構成物質

封入体を構成する物質は様々で、糖質、脂肪、変性したタンパク質、分泌顆粒、色素、さらには細胞内に侵入した細菌やウイルス粒子そのものなど、多岐にわたります。その構成は、封入体が形成された原因や細胞の種類によって異なります。

封入体の分類

封入体は、細胞内のどの場所に形成されるかによって分類されます。

細胞質内封入体：核の外側、細胞質に形成されるもの。
核内封入体：細胞の核の中に形成されるもの。
* 混合型封入体：細胞質と核の両方に形成されるもの。

特に核内封入体は、その形態からさらに分類されることがあり、重要なのは「Cowdry A型」です。これは核内に大きな封入体が出現し、その周囲に染色性の低い透明な領域（ハロ）を伴う形態で、特定のウイルス感染症で特徴的に見られます。

特定疾患における代表例

特定の病気において、特徴的な封入体が診断の手がかりとなります。例えば、狂犬病に感染した動物の脳神経細胞に出現する「ネグリ小体」は、細胞質に形成される好酸性の封入体です。他にも、ボルナ病での核内封入体「ヨースト-デーゲン小体」、鶏痘での細胞質内封入体「ボリンガー小体」、ワクチニアでの細胞質内封入体「グアルニエリ小体」などが知られています。

遺伝子組み換えと封入体

バイオテクノロジー分野では、遺伝子組み換え技術で宿主細胞に目的のタンパク質を大量生産させた際に、そのタンパク質が不溶性の凝集体として細胞内に蓄積することがあります。これも「封入体」と呼ばれます。この封入体化した組み換えタンパク質は、通常そのままでは機能を持たないため、溶解・再構成（リフォールディング）させる工程が必要となることがあります。

関連する概念

神経変性疾患で見られる異常なタンパク質凝集体も封入体の一種と捉えられます。例えば、パーキンソン病やレビー小体型認知症の神経細胞に見られる「レビー小体」は、タンパク質が集まってできた封入体であり、病気のメカニズム研究において重要な対象です。

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