専決処分

専決処分について

専決処分（せんけつしょぶん）とは、議会を経ずに地方公共団体の長が特定の事務を処理する権限です。この制度は地方自治法に基づき設けられており、主に議会が機能しない状況や迅速な決定が迫られる場合に用いられます。

専決処分の種類

専決処分は、地方自治法において二つの種類に分かれます。まず、179条に基づく緊急の場合の専決処分、次に180条に基づく議会の委任による専決処分です。

179条に基づく専決処分

179条による専決処分は、議会が成立しない状況において、特に緊急を要する事態に対応するため、地方公共団体の長が自ら処理する権限を与えています。このような権限が行使された場合、次の議会でその承認を求める必要があります。たとえ議会が不承認とした場合も、処分の効力は変わりませんが、長には政治的な責任が残ります。

180条に基づく専決処分

180条による専決処分は、議会が事前に決議した軽易な事項に関して、地方公共団体の長が議会の承認なしに処分を行うことができる仕組みです。この場合、処分の結果を議会に報告する義務があります。

専決処分の実施主体

専決処分を行えるのは、地方公共団体の長だけではありません。副知事や副市町村長、そのほか長が指定した職員も専決処分を行うことが可能です。このため、新設合併の際には、合併後すぐに新しい条例や暫定予算を専決処分するのが一般的とされています。

実際の運用例

専決処分は過去に何度も実施されています。例えば、2010年に発生した東京都三宅村の住民全員の避難を要する噴火時には、村議会を招集することが困難であったため、必要な補正予算が専決処分により確保されました。また、2011年の大雪による除雪費用の増加時や、2020年の新型コロナウイルス関連の予算確保の際にも、専決処分が使用されています。

違法性が問われた事例

一方で、専決処分に関する問題も存在します。例えば、鹿児島県阿久根市長が議会不承認の状態で専決処分を乱発した状況が報じられたことがあります。この場合、県知事から是正の勧告を受けるも、指示には従わず、その結果議会との対立が深まりました。この事件は、専決処分制度の問題を顕在化させ、以後の制度改正につながったとされています。

法的背景と発展

専決処分は、その運用に際し地方自治法による明確な条文が存在し、適法性が問われた際の判例も残っています。たとえば、名古屋高裁の判決では、専決処分に瑕疵があっても、その後議会の承認があれば、その問題は解決されるという見解が示されました。

このように、専決処分は地方公共団体の効率的な運営の一環として重要な役割を果たしていますが、同時にその実施には慎重な運用が求められています。

もう一度検索