小さな旅館

小さな旅館

松本清張による短編小説『小さな旅館』は、1961年に発表された作品で、同年に短編集『駅路』に収められました。この物語は、主人公が娘の夫に対して抱いた殺意と、その背景に潜む家族愛や復讐心を描いています。物語の舞台となる旅館は、見知らぬ人々が集まる場所であり、秘密めいた雰囲気が漂います。

あらすじ

物語の主人公は、順治という男に対して強い殺意を抱いています。順治は、主人公の娘・敦子の婿養子であり、彼女と結婚した理由は父から譲り受けた財産を目当てだったと考えています。主人公は、娘を守り、その財産を奪おうとしている順治の行動を調査し始めます。調査の結果、順治が複数の女性と交際していることが分かりますが、中でも素人の女性と通っていることがわかります。

主人公は、順治とその女性が二人で江古田の小さな旅館に入っていくところを目撃し、ここから自らの復讐計画を練り始めます。旅館という舞台は、主人公にとっての密室ともいえる空間であり、そこでの出来事が彼の運命を大きく左右することとなります。

作品の背景

松本清張は、この作品について「ある裏通りを歩いて、小さな旅館の看板を見かけたことからアイディアを得た」と述べています。旅館という場所が持つ特有の秘密めいた香りが、本作の重要な要素となっています。このようにして、松本清張は旅館に潜む人々の物語を巧みに描き出しました。

テレビドラマ化

『小さな旅館』は、1981年にテレビドラマとしても制作され、視聴者に新たな形でその物語を届けました。ドラマは1月17日に放送され、視聴率は24.1%を記録したという人気を博しました。キャストには、田村高廣が森田修平役、坂口良子が森田敦子役として登場しており、目黒祐樹が順治を演じます。

ドラマ版では、脚本を担当した猪又憲吾と、監督を務めた齋藤武市が物語の緊迫感を引き立て、視聴者の心を惹きつける展開を生み出しました。音楽は菅野光亮が担当し、映像美と相まって非常に魅力的な作品に仕上げられています。

まとめ

『小さな旅館』は、松本清張の作品の中でも特に印象深い一作であり、復讐や人間関係の複雑さを痛烈に描き出しています。物語が展開する中で、旅館という空間が持つ独特の秘密めいた雰囲気は、登場人物たちの心理描写に深みを与え、読者や視聴者をその世界に引き込んでいく要因となっているのです。

もう一度検索