小さな目撃者 (1970年の映画)

小さな目撃者

『小さな目撃者』（ちいさなもくげきしゃ、原題：Eyewitness、または Sudden Terror）は、1970年にイギリスで製作されたサスペンス・スリラー映画です。主演は、当時人気子役だったマーク・レスターが務めています。本作は、マーク・ヘブデン（別名義ジョン・ハリス）による同名の小説を原作としています。

あらすじ

物語の舞台は、地中海に浮かぶとある小さな島です。この島で暮らす11歳の少年、ジギーは、灯台守の祖父、年の離れた姉のピッパ、そして家政婦という家族とともに静かに日々を送っています。ジギーは人並み外れた豊かな想像力、というよりも激しい空想癖を持っており、そのために周囲の大人たち、特に家族を度々困惑させていました。彼の突飛な作り話に、家族はもうすっかり慣れてしまっている状況でした。

ある日、この静かな島に某国の国家元首である大統領が公式訪問することになります。島には厳戒態勢が敷かれ、歓迎ムードと緊張感が入り混じります。大統領の島内パレードが行われることになり、多くの島民が沿道に詰めかけました。ジギーも姉のピッパに連れられて、この一大イベントを見物に出かけます。しかし、人ごみが苦手なジギーは、パレードルートを見下ろせる絶好の場所はないかと探し回り、近くの古いビルに忍び込みます。誰にも邪魔されない窓辺の特等席を見つけ、一人、パレードが通り過ぎるのを待っていました。

パレードがビルの真下を差し掛かったその時、突如として島に乾いた銃声が一発響き渡ります。その音と同時に、パレードの主役であった大統領が、護衛に囲まれながらも無残にも倒れ伏しました。目の前で、白昼堂々、国家元首に対する暗殺事件が発生したのです。窓辺からその瞬間を目撃したジギーは、あまりの出来事に凍りつきます。

驚きと混乱の中、ジギーは思わず隣の部屋へと視線を向けます。すると、信じがたい光景が彼の目に飛び込んできました。そこには、まだ硝煙の匂いが漂う銃を構え、暗殺を実行したと思しき一人の男がいたのです。しかも、その男は警官の制服を着ていました。動転したジギーは、一刻も早くその場から逃げ出そうとしますが、部屋を出ようとしたその一瞬、男とジギーの視線が交錯してしまいます。

この瞬間、ジギーは、他ならぬ大統領暗殺の実行犯の顔を知る、唯一の目撃者となってしまったのです。何とかその場から逃げ延びたジギーは、恐怖に震えながら家に帰り着き、一刻も早く事態を知らせようと、姉のピッパに目撃した一部始終を必死に話します。大統領が撃たれたこと、犯人が警官だったこと、目が合ったこと——しかし、日頃の空想癖のせいで、ピッパはジギーの話を真剣に受け止めようとしませんでした。「いつもの作り話だろう」と、彼の訴えはまともに聞いてもらえません。祖父や家政婦も同様に、彼の話を信じようとはしませんでした。たった一人、恐ろしい真実を知るジギーは、孤立無援の状態に置かれます。

しかし、事態はジギーが思う以上に深刻でした。暗殺を成功させた犯人は、自分を目撃した少年がいることを察知し、その口を封じるために動き出していたのです。島中を対象に、あの時ビルにいた可能性のある少年を必死に探し始めていました。ジギーは、自らが目撃者となったことで、想像もしなかった巨大な陰謀と、そこから発生する命の危険にさらされることになります。誰にも信じてもらえない孤独な少年が、冷酷な暗殺者から逃れ、真実を伝えることができるのか。閉鎖された島という舞台で、無垢な少年に迫る危機を描く、緊迫のサスペンスが展開されます。

備考

本作に関連する特筆すべきエピソードとして、日本での公開時に発生した裁判があります。主演のマーク・レスターを起用したタイアップ広告に関して、日本での配給を手がけた大映第一フィルムと菓子メーカーのロッテが、マーク・レスター本人および協同企画という団体から訴えられるという事案が発生しました。この裁判は、1976年9月29日に東京地方裁判所で判決が下され、被告である大映第一フィルムとロッテに対し、マーク・レスターおよび協同企画に対する謝罪広告の掲載を命じるという結果に終わっています。

（キャスト情報やその他の詳細情報は、提供された情報には含まれていませんでした。）

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