小久保浩樹

小久保 浩樹

小久保 浩樹（こくぼ ひろき）は、1971年1月20日に大阪府大阪市で生まれた元プロ野球選手。プロの世界では外野手として登録されたが、その経歴は非常にユニークであり、特に野手としての史上初の「両投げ」登録という点で、日本のプロ野球史にその名を刻んでいる存在である。

異才光る高校時代

大阪府の泉尾高等学校で野球に打ち込んだ小久保氏は、高校時代から並外れた才能を示していた。マウンドに上がれば、左右どちらの手でも遜色なく投げ分けるという、投手としても稀有な器用さを見せた。さらに、打者としてもその実力は際立っており、高校通算で40本塁打を記録するパンチ力を備えていた。走攻守全てにおいて高いポテンシャルを秘めており、中でも肩の強さは特筆すべきものだった。遠投では、左右両方向へ100メートルを超える距離を投げることができたという強肩は、当時から大きな武器であった。高校2年生の夏には、チームを大阪府大会の5回戦まで導く活躍を見せている。

プロ入りと歴史的登録

高校での活躍が評価され、小久保氏は1988年のプロ野球ドラフト会議において、西武ライオンズから5位指名を受けた。そして、プロの世界への扉を開く。入団に際し、小久保氏は日本のプロ野球において、野手として登録される選手としては史上初となる「両投げ」登録が行われた。この登録は、当時非常に珍しい試みとして大きな話題を呼んだ。スイッチヒッター（両打ち）は数多く存在するが、野手として左右どちらでも投げられることを前提とした登録は前例がなく、その異色の才能に対する球団側の期待の現れでもあった。そして、小久保氏が引退した現在に至るまで、プロ野球で野手として両投げ登録された選手は他には現れておらず、この点において彼の存在は唯一無二のものとなっている。

プロでの苦闘と早期引退

西武ライオンズに入団後、小久保氏には背番号「58」（1989年）が与えられ、プロ野球選手としてのキャリアをスタートさせた。しかし、プロの世界の厳しさは想像以上であった。期待された両投げの才能や打撃力は、一軍の厚い壁を破るまでには至らなかった。一軍公式戦に出場することは一度も叶わず、プロ入り後の数年間は厳しい状況が続いた。1990年には選手登録を外れ、練習生として再契約。翌1991年には支配下準登録選手となった。そして、1992年に再び支配下選手として登録されるものの、この年も一軍昇格の機会はなく、同年のシーズン終了をもって現役引退を決断した。プロとして過ごした期間は短く、一軍での記録は残らなかったが、二軍（イースタン・リーグ）においては、通算4試合に出場し、5打数2安打、1打点、1三振、打率.400という成績を残している。

野球界を離れて

プロ野球選手としてのキャリアを終えた小久保氏は、球団からの斡旋を受けて、野球とは全く異なる新たな分野へと転身した。引退後はホテル業界に進み、京都にある京都宝ヶ池プリンスホテル（現在の名称はザ・プリンス 京都宝ヶ池）に就職した。野球選手として培った経験とは異なる環境で、社会人としての新たな一歩を踏み出した。

小久保浩樹氏のプロ野球選手としての期間は短く、多くのファンにそのプレーを見せる機会はなかったが、野手として史上初となる両投げ登録という、極めて珍しい記録を持つ選手として、その存在は野球史の一頁に刻まれている。高校時代に見せた両投げ両打ち、強打強肩といった多才なポテンシャルが、プロの世界で花開くことがなかったのは惜しまれるが、そのユニークな経歴は、今なおプロ野球における「両投げ」というテーマが語られる際に、必ずと言っていいほど言及される存在となっている。引退後、野球界とは異なる世界でキャリアを築いている小久保氏だが、彼の持つ稀有な野球能力とプロ入り時の歴史的な登録は、多くの野球ファンの記憶に残るだろう。

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